朝ドラ『ブギウギ』“本物”のレビューシーンの裏側を聞く 蒼井優の起用理由も明らかに

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる戦後のスター・笠置シヅ子をモデルとした本作は、激動の時代の渦中で、ひたむきに歌に踊りに向き合い続けた歌手・花田鈴子=福来スズ子(趣里/澤井梨丘)の笑いと涙の物語が紡がれている。

 演出の泉並敬眞が「福来スズ子の誕生の話」と位置づけた第2週の見どころは、なんといっても梅丸少女歌劇団(USK)のレビューシーン。実際に笠置が在籍していたOSK日本歌劇団が全面協力し、できるかぎり当時を再現。子役や蒼井優らも年明けから舞台の稽古に励み、ドラマの内容とリンクするドキュメンタリーのようなかたちでステージを作り上げた。

「当時の人たちが、レビューを観て『すごいなぁ』と感動した気持ちを現代の人たちにも同じように感じて観てほしいと思いました」(泉並)

 そこで、宝塚やOSKでも演出を手掛ける荻田浩一を舞台演出に据え、歌劇音楽には映画や舞台など様々なジャンルに楽曲提供を行う甲斐正人、ダンス振り付けにはモーニング娘。らの振り付けを担う木下菜津子、OSK出身の奥山賀津子という各分野のスペシャリストに協力を依頼。さらにレビューシーンの撮影には、男役トップスター・橘アオイを演じる翼和希をはじめ、OSKより総勢30人超の劇団員が参加した。

「(レビューシーンは)NHK大阪ホールで撮りましたが、撮影に関係なく、ショーが始まるといろんな人が席に座って観ているんです。それは、ショーとして完成していて面白いからで、荻田さんも『僕は舞台のショーを作ります。あとはみなさんが、好きに撮影してください』と。だいたい各週にショーパートが放送されますが、荻田さんが一つの舞台を毎週のように作るという、すごく大変なことをやっています 」(泉並)

 また「綺麗な舞台の裏側には、汗と涙といろんなものがこもっていることも表現したかった」という泉並は、OSKの取材で知り得た舞台裏のエピソードをドラマに反映。バレエの稽古シーンでも「研究生の細かい進歩を見せる」など、リアリティを追求した。

「実はバレエの先生役のカテリーナ・エフチコーワさんは今、淡路島にウクライナから避難されているウクライナ国立バレエ団の本当の先生なんです。当時を取材した際に、『当時はロシア革命から逃げてきたロシアの方がバレエの先生をしていた』と聞き、今の時代と重なるところがあるなと思いました」(泉並)

 そしてステージに欠かせないのが、劇団員がまとう衣装の数々。「普段の衣装部にプラスして、舞台系の衣装担当の方にも来てもらっているので、本編のドラマだけではない、もうひとつ別の作品の部隊が動いていると思ってもらえたら」と泉並。鈴子が初舞台で着用した“水の雫”の衣装は、泉並が考えたあらすじをもとに荻田がスケッチを描き、当時の資料を参考に衣装部とともに制作したという。

 一方、華やかなレビューと対照的に描かれるのが、鈴子の日常。第1週では親友・タイ子(清水胡桃)、第2週ではUSKの同期・桜庭辰美(木村湖音)に対するお節介な行動について、鈴子自身が反省する姿も印象的だった。

「脚本の足立(紳)さんとは、僕たちの作品も含めて(今の作品には)毒がなくて綺麗すぎると話していました。本当の世の中はもっとグチャグチャしていて、そこに人間性がある。だからこそ胸を打つんじゃないかということで、今回のドラマではあえてそこに挑戦してみることにしました。はたから見たら『もうちょっと考えれば、それってさ……』と思うけれど、鈴子にとってはそこに倫理と優しさがあるので、『それを描くのはやめましょう』というのは違うのではないかと。むしろ福来スズ子にはそういった部分があったからこそ、戦後の日本でスーパースターになったんじゃないか、といった思いもあり、そこを一つの軸として大切に描いています」(泉並)

 そんな鈴子の“憧れ”である大和礼子を演じるのは蒼井優。制作統括の福岡利武は「大河ドラマ『龍馬伝』でお仕事をご一緒させていただいて、本当に素敵な人だな、凛とした姿が美しい人だなと思っていました。その上で、礼子は鈴子の憧れの先輩であり、バレエの場面もあるので、蒼井さんにやっていただければ本当に力のあるシーンになるなと思いました」と起用理由を説明する。

「第2週は、水曜まで蒼井さんは一言もセリフを話さないんですが、全くそう感じさせない存在感がある。水曜日に一言、『話していいなんて言ってないけど』というところから始まりますが、現場でもあのシーンは澤井さんが緊張していたんですよね。その緊張感から伝わるものもあるのかなと思っています」(泉並)

 出産後、初のドラマ出演となる蒼井は、年明けから毎週時間が許す限りバレエの稽古に参加。泉並は「お子さんを産んだ後、すぐにあの動きができるのはすごいこと。かなり稽古してくれましたし、歌劇がお好きということもあり、すごく楽しんでやってくれました」と振り返り、「ご本人はすごく話しやすい方ですが、歌劇団のワンオブトップという雰囲気で現場にもいてくれました。第3週以降、ヒロインが趣里さんになってからの関係性も楽しみにしていただければ」と呼びかけた。

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