要潤、田中哲司、今野浩喜、亀田佳明 『らんまん』を支えた植物学教室の俳優たち

 徳永と同じように、当初は万太郎の存在を疎んじていた講師の大窪。東京府知事から元老院議官にまでなった、明治政府の地位の高い官職の父を持つ大窪は、それにもかかわらず、就職先がなかなか見つからない中、勝海舟の口利きでようやく植物学教室の職に就いた。

 それまで植物学に縁がなかった大窪だったが、万太郎の純粋な植物愛に心を動かされるようになり、万太郎と共同でヤマトグサの研究をして論文を発表。万太郎と心を通わせたことで、彼の人生も大きく変わったのだ。

 助教授にまで昇進したものの、大窪は帰国した徳永の研究方針の変更から非職になってしまう。大学に復帰した万太郎に状況を教えて忠告するとともに、エールを送って大学を去っていった。大学という組織の中で翻弄された大窪だが、純真な万太郎との出会いは彼にとって貴重なものとなったに違いない。

 福井出身で教師だった野宮は、田邊に登用され、画工として植物学教室に出入りしていたが、突然現れ、植物画を精巧に描く万太郎をよそ者扱いし、当初は親しくなろうとしなかった。だが、万太郎の絵が、野宮の知る美術としての絵ではなく、植物そのものを描く、植物学のための絵であることに刺激を受け、万太郎を尊敬するようになる。

 お互いに持っていない技術を持っていることで、植物学教室には万太郎と自分の2人とも必要だと田邊にも意見を言うようになるほど、万太郎への想いが強くなった野宮。その後、彼は植物学教室の波多野(前原滉)に声を掛けられ、植物学を本格的に学び始め、倍率900倍の顕微鏡下の植物解剖図を描ける唯一の研究者となる。

 そして、波多野と共に世界初となるイチョウの精虫の発見を成し遂げた野宮。万太郎も2人を祝福するが、画工だった野宮の功績を植物学会が否定したため、野宮は大学を去ることに。野宮を尊敬し、彼の功績を心から喜んだ万太郎は、納得できずに悔しがっていた。その後、合祀反対運動の助力を万太郎に求めた野宮は、万太郎の行動力に深く感銘。野宮と万太郎は、お互いに尊敬し合う間柄となった。

 出会った相手の心を掴み、最初は否定されても、一生忘れられない存在となる万太郎。植物学教室で出会ったこの4人の心も万太郎によって開かれ、良い影響を与えたことは間違いない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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