『ハヤブサ消防団』『ばらかもん』“外様”視点のドラマが流行? 海と山で描かれ方に違いも

 そして、さらに閉鎖的な空間として描かれているのが、『ハヤブサ消防団』の舞台となる山間部の“ハヤブサ地区”。中部地方にある架空の町という設定だ。原作者である池井戸潤の地元がモデルになっているためか、架空の町といってもかなり緻密に作り込まれており、同じく山間部出身の筆者もそのリアルさに度々驚かされる。特に、外様の人間に対する接し方。本作ではスランプに陥ったミステリー作家の主人公・太郎(中村倫也)が父の故郷であるハヤブサ地区に移住してくるところから始まるが、地元の人たちは彼を快く受け入れる。よく田舎の人は排他的なイメージを持たれがちだが、実際は違うことが多い。むしろ過疎化が進む現代では、自分たちの街を気に入ってくれている移住者というのは、地元の人にとってもありがたい存在なのだ。

 一方で、“郷に入れば郷に従え”というように、自分たちが築いてきた習慣や風習を強要しがちな面もある。実際に作中では、田舎でのんびりと執筆活動に打ち込めると思っていた太郎が越してきて早々に地元の消防団に入らされ、さらには住民が毎日交代で神社の境内にロウソクを灯す燈明当番や、菩提寺の行事を手伝う寺当番など、様々な役を負わされて戸惑う場面もあった。よそ者を受け入れはするが、「あなたもあなたで田舎のやり方に従ってね」というわけである。従わなければどうなるかといえば、後に遺体となって発見される住民・浩喜(一ノ瀬ワタル)のように村八分に遭うことも。浩喜は若い頃から素行が悪く、生前には集落で起こる連続放火の犯人という噂も立っていた。

 本作だけではなく、『連続ドラマW 鵜頭川村事件』(WOWOW)や『ガンニバル』(ディズニープラス)、アニメ『ひぐらしのなく頃に』などもそうだが、山間部はどこか陰湿なムードが漂い、その結果として不可解な事件が起こる場所として描かれがち。それはやはり海辺の街と比べて、土地が拓けていない閉鎖空間だからというのもあるだろう。決して全ての山間部がそうだとは言えないが、そういう場所はやはり人の情念や鬱憤が溜まりやすい傾向にある。実際に山間部で起きた事件が多いのも、ミステリーの舞台にされる所以かもしれない。

 ただし山間部の田舎の悪い面ばかりではなく、良い面もしっかり描いているのが『ハヤブサ消防団』だ。特に街の安全と安心を守る消防団の正義感、そして彼らと太郎の温かなやりとりを通じて、人々が寄り添いながら暮らす土地の魅力も強調されている。今期はそうした各々異なる地方の描き方に注目しつつ、ドラマを観るとより物語への解像度が高まるかもしれない。

■放送情報
『ハヤブサ消防団』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:中村倫也、川口春奈、満島真之介、古川雄大、岡部たかし、梶原善、橋本じゅん、山本耕史、生瀬勝久、麿赤兒、村岡希美、小林涼子、金田明夫、大和田獏
原作:池井戸潤『ハヤブサ消防団』(集英社)
脚本:香坂隆史
演出:常廣丈太(テレビ朝日)、山本大輔(アズバーズ)ほか
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田サヤカ(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作協力:MMJ
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日

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