実写版『ONE PIECE』吹替版はTVアニメと異なる演技に? “洋画”的になったルフィやゾロ

 そうした役に対する様々な思いや深い理解を内に秘めながらも、海賊狩りとしてルフィと出会う頃のゾロや、海上レストランでコックをしていたサンジといった、どこか初々しさが漂う「イーストブルー編」の頃の2人を演じる中井と平田の、若々しさと安定感とが融合した演技も、実写ドラマ『ONE PIECE』の聞きどころだ。

 シャンクス役の池田秀一のように、その声を聞けば顔が浮かぶキャラクターを、ドラマの中で役者がどう演じているかにも注目をしたいところ。あとは、「イーストブルー編」でルフィたちの前に立ちふさがる海賊アーロンの声を演じているのが誰か、ということにも。アニメシリーズでは小杉十郎太が長く演じているが、実写ドラマ版では名前が挙がっておらずキャスト名も不明。吹き替えの野太い声は悪辣なアーロンにピッタリだが、アニメシリーズの狡猾さもまたアーロンの特徴だけに、どのような判断があったのかが気になる。

 そうした面々がしっかりと周りを固めていても、やはり『ONE PIECE』といえばルフィがストーリーの中心にいて、長大な物語を引っ張っている立役者だ。無邪気で奔放で最強という、どこまでもマンガ的でアニメ的なキャラクターを、実写ドラマ版ではイニャキ・ゴドイが原作者の尾田栄一郎も納得させる自在さで演じてみせている。声の方でも、ルフィが実在したらこう喋りそうだといった雰囲気を出している。

 そうした努力に日本語吹き替えの田中真弓もしっかりと寄り添って、「アニメ版で長く演じてきたから自分こそがルフィだ」といった強引さではなく、イニャキが演じるルフィから聞こえてきそうな日本語のセリフを聞かせてくれている。全員が実写版『ONE PIECE』を成功させたいという思いで取り組んでいることが伺える。

 「俺たちなら、この仲間なら、何だってできる」と語るルフィのセリフは、そのまま『ONE PIECE』を支えてきた声優陣にあてはまるということ。世界が注目する実写ドラマ版の吹き替えを、それぞれの国の字幕で見るオリジナル派も出てくるくらい、素晴らしい仕上がりになっていることだろう。

■配信情報
Netflixシリーズ『ONE PIECE』
Netflixにて、8月31日(木)全世界独占配信
原作&エグゼクティブ・プロデューサー:尾田栄一郎
脚本&ショーランナー&エグゼクティブ・プロデューサー:マット・オーウェンズ、スティーブン・マエダ
キャスト:イニャキ・ゴドイ(モンキー・D・ルフィ)、新田真剣佑(ロロノア・ゾロ)、エミリー・ラッド(ナミ)、ジェイコブ・ロメロ(ウソップ)、タズ・スカイラー(サンジ)、ヴィンセント・リーガン(ガープ)、モーガン・デイヴィス(コビー)、 ジェフ・ウォード(バギー)、マッキンリー・ベルチャー三世(アーロン)、セレステ・ルーツ(カヤ)、エイダン・スコット(ヘルメッポ)、ラングレー・カークウッド(モーガン)、ピーター・ガジオット(シャンクス)、 マイケル・ドーマン(ゴールド・ロジャー)、イリア・アイソレリス・ポーリーノ(アルビダ)、スティーヴン・ウォード(ミホーク)、アレクサンダー・マニアティス(クラハドール)、クレイグ・フェアブラス(ゼフ)、チオマ・ウメアラ(ノジコ)
©尾田栄一郎/集英社

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