『VIVANT』堺雅人とテントともう1人の乃木憂助 想像力を刺激する陰の組織

 第5話で登場した櫻井(キムラ緑子)は肩書が司令で乃木の上役にあたる。乃木と櫻井が落ち合う方法がおかしかった。饅頭のサインと茶の容器に隠された符牒を使い、一般人にまぎれて偶然出会った格好でというのが、そこまでかと思うほどの念の入れようだった一方で、後日、本部のようなところから別班のメンバーと直接やり取りしており、乃木ともそうやって連絡が取れたのではないか、あるいはテントの事案は別班内でも一部の者しか知らないトップシークレットとも考えられる。

 黒須(松坂桃李)のいでたちがどこか漫画っぽいなど、別班は私たちが陰の組織と聞いて考えるイメージを踏襲しているのが興味深い。別班については非公式かつ謎に包まれた組織として、部分的に関係者の口を通して語られるのみで、余白の部分が多いが、かえって想像力を膨らませることで、知られざるヒーロー像に厚みを持たせていると考えられる。

 気になったのは乃木のもう一つの人格だ。第2人格のF(エフ)は別班の乃木を代表していると思われたが、第5話では普段の乃木のまま別班任務に身を投じていた。Fと対照的な表の人格は、別班の身分を隠すための単なるカモフラージュとは思えない。養護施設の園長によると乃木は記憶喪失になっており、防衛機制として別の人格が生み出されたとも考えられる。二つの人格が分裂して入れ替わるというよりも、乃木という一人の意識の中で共存していると考えた方がこの場合しっくりくる。相反するペルソナは対立から解消へ向かうのが一般的だが、物語の進展とともにもう一つの人格がどんな変遷を遂げるかにも注目したい。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

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