『マイ・エレメント』は「自信をくれた作品」 制作スタッフが明かす大きな試練の克服

 誰しもが共感できるようなストーリーに、色彩あふれる見事なアニメーション表現が多くの観客を魅了しているディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』は、完成に至るまでに数々の試練があったという。キャラクター・スーパーバイザーのジュニ・リンは「テクニカル面でもアーティスティックな面でも、とても難しい作業だった」と撮影を振り返る。米カリフォルニア州にあるピクサー・アニメーション・スタジオで行ったインタビューをお届けする。

「初めて“形のないもの”同士をぶつけあう必要があった」

ジュニ・リン

ーーキャラクター・スーパーバイザーとして、『マイ・エレメント』では具体的にどのような作業をされたのか教えてください。

ジュニ・リン(以下、リン):この映画にはキャラクター・スーパーバイザーが2人いて、僕はそのうちの1人でした。僕たちの部署では主に、キャラクターを言わば“デジタルのパペット”のようにとらえます。アニメーション部などほかの部署が、それらのパペットを動かせるようにするのが僕たちの仕事なんです。その中でも特に僕がやるのは、素材を正しく描写すること。火は火のように、水は水のように、木は木のように動くようにすることです。色に関しても、正しい色になるように調整を行いました。

ーーその中でも特に難しかった作業は何でしたか?

リン:出てくる素材という意味において、この映画は特別でした。これまでの映画に出てきたキャラクターには、髪や肌といったものがありました。でも『マイ・エレメント』のキャラクターは違います。「火」には表面がありません。僕たちはそのパペットを作るわけです。「火」は違う色がレイヤーになっていて、それがルックとなっています。「火」なので、常に動いているわけですが、その動きは物理にもとづいていなければなりません。一方で、アニメーション部がキャラクターにやらせたいことをやれる状態にする必要もあったのです。それは「水」に関しても同じでした。テクニカル面でもアーティスティックな面でも、とても難しい作業でした。

エンバーのコンセプトアート

ーー過去に手がけてきた作品と比べても難しい作業だったわけですね。

リン:僕たちはこれまで、『マイ・エレメント』に登場するようなキャラクターを手がけたことがありませんでした。『モンスターズ・インク』では初めて毛がふさふさしたキャラクターを生み出しましたが、今回は初めて“形のないもの”同士をぶつけあう必要がありました。なので、物理の原理をベースにシミュレーションし、キャラクターを作っていったのです。異なるエレメントが4種類あって、しかも同じエレメントの中にも違ったバリエーションのキャラクターがたくさんいるわけなので、制作的にはとても難しい映画でしたが、僕たちはこの世界をうまく作り上げてみせたと思っています。

ーー自分たちの仕事に誇りを持っていると。

リン:自分たちが手がけたキャラクターすべてを誇りに思っています。もっと広い意味で言うと、僕はこのチームを誇りに思います。みんなで力を合わせて、ひとつずつ、それぞれにちょっと違った方向から問題を解決していきました。そして最終的に僕たちはこれらのキャラクターがいるこの世界を作り上げることができたのです。

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