『ラストマン』福山雅治が日曜劇場リベンジを完遂 圧倒的な人間ドラマの熱量

 2人の息子の幸せを願って自ら犠牲となり、塀の中で過ごした41年は永遠のように長い時間だったろう。鎌田との約束どおり、清二は心太朗を警察一家の一員として育て上げた。自ら手を汚し、それを隠してきた清二は、後ろめたさを感じてきたはずだ。それでも自身の決断に迷いはなかったし、信じる正義を貫いてきた。ただし、そのことが法の精神にかなうかは別である。清二がついた嘘や隠した真実は心太朗の心に暗い影を落とし、ゆがんだ正義感を育むことになった。

 小さな過ちを隠すため無実の人々を罪に追いやることの教訓もさることながら、ここには圧倒的な感情の奔流があった。それぞれの思いがぶつかり、渦を巻いて溶け合うところから発する圧倒的な熱量に、これぞ日曜の夜にふさわしい劇場と膝を打った。その中心にいたのは福山雅治と大泉洋である。完落ちの寺尾聰を前にしたがっぷり四つの熱演は、本作のクライマックスだった。

 あらためて『ラストマン』というタイトルについて考える。自らが罪をかぶり、また汚れ役を引き受けた鎌田もラストマンだったのではないか。強大な相手に立ち向かい、たった1人になっても闘い続ける。その思いに触れたのは、皆実と心太朗が覚悟を決めて過去と対峙したからである。生きている限り過去から離れることはできないが、そこに未来への道があるという示唆は希望を与えるものだ。本作は福山にとって『集団左遷!!』(TBS系)以来の日曜劇場リベンジとなった。続編が観たいかと聞かれたら、答えはもちろん「アグリー」である。

■配信情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TVer、Paraviにて配信中
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

関連記事