『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』は“黄金の思い出”になる! TV放送を楽しむポイント
子供のころ、TV放送で観て面白かった映画は大人になっても忘れがたく、黄金のような思い出として残る。自分にとってはそれが『ブレイド』(1998年)や『パニッシャー』(2004年)、そして『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)だったりするのだが、そんな黄金の作品の一本である『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)が6月23日に、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される。
あまりにも勝手知ったる名作なのでついついスルーしてしまいそうだが、やはりTV放送で名作映画を観るのは何物にも代えがたい体験。また、シリーズ最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が公開されるわけなので、未見の人もこの機会に是非観てほしい。というわけで本記事では『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(以下、『最後の聖戦』)の魅力をいくつか挙げてみた。無論これで名作映画たる本作の魅力を全てカバーできるわけではないが、今だからこそ再確認できる魅力があったりする。
子供の記憶に刻まれる、蠱惑的な恐怖
自分が子供の頃、『最後の聖戦』を観て強く心に刻まれたのは、インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)のタフな活躍でもなければ、その父ヘンリー・ジョーンズ博士(ショーン・コネリー)のユーモアスな姿でもない。ついでに言えばあの聖杯の輝きでもない。子供の頃の自分が強く惹かれたのは、永遠の命をもたらす聖杯が隠された美しき神殿。そこに待ち構える殺人トラップ機構だ。
蜘蛛の巣が張り巡らされた先の見通せぬ暗闇から風が吹き、なにかが一閃した後。生首がゴロゴローッと景気良く転がっていく。「なんてことだ。とんでもないものを見てしまったぞ」。子供心にそう思った。怖かったし、とてもドキドキした。一見子供の教育上まったくよろしくないように思えるが、その思い出は決してトラウマとして刻まれたものではない。むしろ「見てはいけないもの見てしまった」という高揚感と共に黄金のような思い出として記憶されている。個人的意見を言わせてもらうと、子供も観ることのできるアドベンチャー映画にこそ、こういうショッキングさが必要だと思う。
そもそも『インディ・ジョーンズ』シリーズに出てくるお宝はどれも「こんなものを見つけてしまったら、大変だぞ」という恐ろしさと「それでもどうにかして暴いて見つけてしまいたい」という魅力を兼ね備えている。この映画に対して抱く蠱惑的で自分の手には負えないような恐怖は、まさに『インディ・ジョーンズ』シリーズにおけるお宝そのものである。そしてインディはそんな蠱惑的恐怖に向かって力強く前進するのだ。
アドベンチャー映画で大切なのはつまるところ蠱惑的な恐怖を知識と肉体と勇気で乗り越え、神秘に手を伸ばそうとする意思である。我々はそういったことを、ショッキングなシーンを通じて学ぶのだ。だからこそ子供心に刻まれる「なにかとんでもないものを見てしまったぞ」という恐怖は、どこか崇高な香りがする。
なお、『最後の聖戦』のレーティングはPG-13。13歳未満のお子さんには保護者の強い同意が必要だ。
『RRR』で再注目! アリソン・ドゥーディの怪演
本作のヒロインであるエルザを演じるのはなんと『RRR』でスコット・バクストン総督(レイ・スティーヴンソン)の妻キャサリン・バクストン役で強烈な印象を残したアリソン・ドゥーディ。マッリ(トゥインクル・シャルマ)を誘拐し、ビーム(ナンダムーリ・タラーカ・ラーマ・ラオ・ジュニア)の血を見たさに私物にしては凶悪すぎる形状の鞭をラーマ(ラーム・チャラン)に渡して寄越すなど、スコット総督にも負けず劣らずな悪役ぶりを見せ、その怪演が記憶に焼き付いた人も少なくないだろう。
一応『最後の聖戦』における役割はヒロインということになるアリソン・ドゥーディだが、聖杯を手に入れるために手段を問わないその姿は時に恐ろしく、ヒロインというより悪役に近い。ちなみにスティーヴン・スピルバーグ監督がS・S・ラージャマウリ監督との対談で『RRR』でのアリソン・ドゥーディの死に様を絶賛したそうだが、『最後の聖戦』を観ればそれも納得である。というわけで『RRR』で再注目を浴びたからこそ、『最後の聖戦』におけるアリソン・ドゥーティの強烈な演技は改めて観てほしい。