『どうする家康』有村架純が“命を懸ける”覚醒した瀬名へ　広瀬アリスの対照的な明るさも

　『どうする家康』（NHK総合）第23回「瀬名、覚醒」。瀬名（有村架純）のもとに、武田の使者・千代（古川琴音）が訪れていた。瀬名と千代の密会を知った五徳（久保史緒里）は信長（岡田准一）に密告する。信長は水野信元（寺島進）が武田と内通していると言いがかりをつけ、家康（松本潤）に処分を迫った。水野は果てる前、家康にこう言い残した。

「俺は、お前への見せしめなんじゃ」
「裏でこそこそやっておると、こういう目に遭うぞという忠告じゃ」

　家康の身内の誰かが信長への謀反を企てている。家康にはにわかに信じがたいが、瀬名こそが謀反を企てている張本人だ。第23回では、瀬名が秘めてきた大きな夢のため、すでに覚悟を決めていることが分かる場面がいくつもあった。

　千代との密会では、瀬名が緊張感をもって千代と言葉を交わしているのが、時折つく深いため息やほほえみながらも少しこわばった表情からうかがえる。「お方様は、お心を隠すのがお上手」と千代が言っていた通り、家康が敵対する相手と対等に交えるため、相手に呑まれまいとしているのだろう。

　瀬名は戦を終わらせるため、勝頼（眞栄田郷敦）に和睦を申し入れるよう勧めるが、その背景にあるのは家族への思いである。一人、考えごとに耽る瀬名は浮かない顔をしているが、家族の前では瀬名の優しさが溢れ出す。

　奥平信昌（白洲迅）のもとに輿入れする亀姫（當真あみ）の前で、瀬名は明るい表情を見せていた。亀姫との場面は別れの場面でもあるが、寂しげな亀姫に「そなたは笑顔が似合うぞ」と励ます優しげな手元からは、娘の幸せを願う親の愛情が感じられた。

　新しく家康の側室になった於愛（広瀬アリス）と向き合う場面では、於愛の正直で明るい性格に、瀬名はやわらかな声色で「そなたのおおらかなところが、きっとこの先、殿の助けになろう」と安堵したように言った。於愛に語りかけた言葉ではあるが、家康を思う瀬名の心も感じられる。瀬名は深々と頭を下げる於愛に静かなまなざしを向けて「これで安心じゃ」とそっと呟いた。何かを予感するかのような口ぶりで、その口元はほほえんでいたが、瞳の奥には物悲しさがあった。

　瀬名は、長篠の戦い以降、信康（細田佳央太）のことも気がかりだ。信康は鷹狩りの帰り、通りすがりの僧を斬り捨てた。信康は家臣・平岩親吉（岡部大）にまでも刀を向ける。信康の気を静めた瀬名だが、終わらない戦によって愛する息子が深く傷ついていることを知り、瀬名の心は張り裂けそうになっていたはずだ。