『日曜の夜ぐらいは...』カフェはサチ、翔子、若葉のサードプレイスに 仲間と描く夢の輪郭

 地に足がついているどころか、地面に足がめり込んでいるような彼らが、控えめに言っても浮かれている。サチ(清野菜名)、翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)とみね(岡山天音)が、代わりばんこにカフェ「サンデイズ」の物件の警備活動をし合う『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第7話。

 そんなサチの様子を母親・邦子(和久井映見)は「“自分のもの”って感じがして嬉しいんだと思う」と言ったが、彼らがはしゃぐ姿を観られる日曜の夜なんて最高だ。無敵感を覚えられたのも束の間、落ち着かなさや何に使えばいいのか心底わからない途方もなさ、否応なしにも自分たちの平凡さを突きつけてくるかのようだった通帳に印字された、無機質な1,000万円の残高数字。それを持ち寄って皆の夢が詰まった目に見える形になった途端、そこは彼らにとって生きる張り合いになり、これまでの自分たちをそっと肯定し受け入れてくれるような場所になった。“絶対に幸せになる”という約束を思い出させてくれる決意や覚悟の証でもある。自宅でも現在の職場でもない“サードプレイス”ができた。そしてオープン前から、「サンデイズ」はある意味オープンのきっかけを与えてくれた恩人の一人、宝くじ売り場の販売員の猫田(椿鬼奴)にとっても入院明けの目標になった。

 しかし、浮かれてばかりもいられない。それぞれが“現実”と改めて向き合い直すタイミングがやって来る。若葉はカフェでのバイトをしている中で、嫌でも男性客と接しなければならない場面に遭遇する度、自身の男性恐怖症を強烈に意識することが増えてきた。そしてその度、これがゆくゆく「サンデイズ」の足を引っ張ることにならないかと気に病み、落ち込む。真っ白な作業着にマスクをし、目元だけが見えるちくわぶ工場の制服の下でその苦手意識や嫌悪感を必死に抑え、努めて無表情で闘っていた若葉の姿を思い出すと胸が痛む。さらには、母親のまどか(矢田亜希子)にどうやら東京にいることがバレてしまったようで、またあの悪魔の手が忍び寄っているようだ。

 両親の遺産相続の放棄を打診されていた翔子も、ついに兄の敬一郎(時任勇気)ともう一度会って話をする。遺産の放棄をする代わりに一度家に帰って母親に会わせてほしいとお願いするも、兄には「取り返しのつかないことってのはな、あるんだよ」と一蹴されてしまう。確かに弾き出された孤独もあるだろうが、良くも悪くも壊れてしまった家族から物理的に距離を取ることができた翔子とは裏腹に、壊れてしまって元には戻らないものを抱えたまま日常を過ごしてきた兄の苦悩にも思いを馳せてしまう。

 そしてカフェ開業準備が本格化していく中、サチのバイト先のファミレスでは一気に人が辞めてしまう緊急事態が発生し、ピンチヒッターとしてフルでシフトに入ってほしいと田所(橋本じゅん)から頼まれてしまう。でもある意味、それがサチに好きでも楽しくもなかったけれど生活を支えてくれた職場への感謝や恩返しの気持ちを思い起こさせ、田所にもその一点についてはきちんとお礼が言えた良い機会になった。各々にとって新しい門出を迎える前にケリをつけておきたい身辺整理が進んでいるとも言える。まさに、邦子が言った掃除機をかけていた時に、思わず足の裏で思いっきり踏んでしまったおもちゃのブロックの痛みを伴う幸福感、“笑っちゃうけど痛い”という感覚に近いかもしれない。若葉の祖母・富士子(宮本信子)にとっては三角形の積み木で、みねにとっては母親が踏んづけて壊してしまったプラレールを前に、2人して泣いた時にそっと広がった幸せの中にある痛み。そんな割り切れないほろ苦い痛みを噛み締めながらも、自分の不在時にも夢に向かっての歩みを進めてくれる仲間がいて、そしてそこにはしっかり自分の居場所が当たり前のように用意されていて。カフェプロデューサーの住田賢太(川村壱馬/THE RAMPAGE)の計らいで作成されたカフェの完成図の中にすっかり馴染む自分たちのイラストに、ますます仲間と描く夢の輪郭がはっきりし始めた。

■放送情報
『日曜の夜ぐらいは...』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:00〜放送
出演:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠、岡山天音、川村壱馬(THE RAMPAGE)、やついいちろう(エレキコミック)、今立進(エレキコミック)、椿鬼奴、飛永翼(ラバーガール)、橋本じゅん、和久井映見、宮本信子ほか
脚本:岡田惠和
演出:新城毅彦、朝比奈陽子、高橋由妃、中村圭良
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー    山崎宏太、山口正紘、郷田悠(FCC)、浅野澄美(FCC)
制作協力:FCC
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/drama_22_abctv/
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