重岡大毅が際立たせる“人間臭さ”と痛みの過去 『それパク』では重層的な役割を担う

 重岡大毅がまたなんとも魅力的なキャラクターを演じている。『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)に登場する「弁理士」の資格を持つ知財のプロフェッショナル・北脇雅美だ。

 北脇は主人公の藤崎亜季(芳根京子)が働く月夜野ドリンクに親会社から派遣されて来たエリート社員。重岡持ち前の弾けんばかりの人懐っこそうな笑顔は一切封印。淡々とした話しぶりに、表情一つ変えず仏頂面を覗かせる。一定のテンションを保った振る舞いをする北脇は少し取っ付きにくい印象を与え、冷徹に思われかねないが、どうやらそれは北脇のごくごく一面に過ぎないようだ。

 第4話では北脇が元々は親会社の開発部で熱心な研究員だった過去が明かされ、亜季と同じキャリアを歩んでいることがわかった。研究員として良きライバルであり親友でもあった南(吉村界人)の“汗と涙の結晶を守る”のが自身の役割だと、知財部への急な異動を申し出たのだという。研究員時代の回想シーンでは和気藹々とした雰囲気で南と議論を重ねており、今の北脇とは全く異なる印象を受けた。

重岡大毅の演技には色気も宿る いかなる役柄も許される“懐の深い”俳優になるまで

芳根京子が主演を務める日本テレビ系ドラマ『それってパクリじゃないですか?』で、笑顔を封印したクールな演技で話題となっている重岡大…

 もしかすると北脇は過去に自分の、あるいは尊敬する仲間の研究成果が悪意ある何者かに不本意な形で利用されたり悪用されたことがあったのかもしれない。あるいは、そんな努力の結晶を何者かに横取りされそうになった危うい経験をしたのかもしれない。涙を呑むような悔しさ、不甲斐なさを経験したのが今の北脇の隙のない仕事のスタイルに繋がっているのではないだろうか。自身が知財部に異動した理由を亜季には「南の研究員としての才能には敵わないと思ったから」「南に恩を着せてやろうと思っただけ」と話していたが、北脇は周囲にというよりも、誰よりも自分に対して厳しい人なのだろう。

 知財の番人として一寸の隙も見せず、つまり極力私情を挟まず淡々と抜かりなく処理する。それはかつて“守れなかった”何かを抱えた人間だからこその責任感・使命感の表れなのだろう。

 そして何と言っても話が進むにつれて北脇の隠しきれない面倒見の良さや相手思いなところが徐々に、そして時たま一気に滲み出てくるのがたまらず、目が離せない。第4話では親会社側の知財部として月夜野ドリンクと敵対しそうになった際にも、さりげなく上層部にコラボレーションを提案し亜季に救いの手を差し伸べたり、亜紀が提出した書類には真っ赤になるほど添削が入れられていた。そして「初めてにしてはよくできていました」と目を合わさず言うあたりにも、彼の不器用さと人の良さが垣間見える。

5分でわかる #それパク 第5話ダイジェスト/芳根京子×重岡大毅(ジャニーズWEST)【日テレドラマ公式】

 第5話では売り言葉に買い言葉で亜季の担当する案件に一切口出しをしないとムキになって言ってしまったものの、気になって仕方ない北脇の珍しく落ち着きのない様子が愛らしい。なんとか彼女にヒントに気付かせようとしたり、五木(渡辺大知)との面接練習の近くで何食わぬ顔をして仕事をしているテイを装いながら、実際には聞き耳を立てていたり、こっそり亜季の参考書に付箋を貼ってあげていた。そこまでしておきながら、ようやく彼女が気付いてお礼を言ってくれた際には、照れ隠しのためまた素直じゃない反応を見せるところまで含めて北脇らしさ全開だ。

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