ジェームズ・ガンが真骨頂を発揮した『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

 恐るべし! ジェームズ・ガン! 今回ご紹介する『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023年)は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)以降のMCU映画では、個人的に断トツと推したいほどの快作に仕上がっている。笑って、泣いて、燃える、胸を張って世に出せるド直球の冒険活劇であり、特に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(以下、『GotG』)シリーズのファンならば、『エンドゲーム』にも近い興奮を覚えるのではないか。ともかく同シリーズの監督であるジェームズ・ガンは今回、最高の仕事をしたと言っていいだろう。

 いきなり絶賛から入ったが、今回のあらすじを説明しておこう。その名の通り宇宙を守るチーム“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”は、色々あった末に何となく落ち込んだ日々を送っていた。ヒーロー活動をしているが、最愛の人を失ったピーター・クイル/スター・ロード(クリス・プラット)は酒びたりの毎日を送り、その相棒のロケット・ラクーン(ブラッドリー・クーパー)は、90年代を代表する落ち込みソング、レディオヘッドの「Creep」を聴いて黄昏ていた。そんなガーディアンズのもとに、どことなく野田クリスタルに似た全身金色の男、ウォーロック(ウィル・ポールター)が攻めてきた。ガーディアンズの奮闘によってウォーロックは撃退されるも、ロケットが致命傷を負ってしまう。治療のためにロケットの体を調べる一行だったが……それはロケットの哀しい過去と、宇宙で無茶苦茶な暴挙を繰り返す巨悪との戦いの旅の始まりだった。

 あらすじからも分かるように、今回の主役は銃を撃ちまくるアライグマこと、ロケット・ラクーンである。本作ではごくごく平凡なアライグマだった彼が、どのようにして人間以上の知恵を持ち、そして孤独な賞金稼ぎになったかが描かれるわけだが、これが涙なくしては観られない。とある実験によって、望んだわけでもないのに特別な力を得た者たちの悲哀が、これでもかと描かれるのだ。悲惨な実験で異形と化した肉体、どこまでいっても「物」としてしか扱われず軽んじられる心、そんなドン底にいながら、同じ境遇の者たちのあいだで育まれていく友情……こういった王道の泣かせるドラマをアライグマ、カワウソ、ウサギ、セイウチでやられるのだからたまらない(各キャラの異形デザインも絶妙で、このへんのサジ加減がさすがジェームズ・ガンである)。あまり語りすぎるとアレなのだが、『トイ・ストーリー』(1995年)……というよりも日本の大阪漫画の金字塔『じゃりン子チエ』の小鉄やアントニオ・ジュニアが主役の回に近い感触がある。ここで私は上手いこと泣かされてしまった。

 そんなわけで過去イチにダークでシリアスな物語が描かれる本作だが、もちろん悲惨なだけでは終わらない。ロケットを救うべく奔走するいつもの面々は、相変わらずのズンドコ感があって楽しく、特にチーム随一の暴走野郎ドラックス(デイヴ・バウティスタ)は、中の人の演技力がドンドン増しているせいか「出てくるだけで面白い」の領域に入っている。ネビュラ(カレン・ギラン)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)、ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)の3人娘も魅力的だし、グルート(ヴィン・ディーゼル)は、今回はカッコいい系の見せ場が多くて嬉しい。その他の脇役も全員魅力的で、前作から続投のシルヴェスター・スタローンもごくごく自然に馴染んでいる(これも驚異的だ。普通ならスタローンほど押し出しの強い人物を、あそこまで自然に脇に置いておくことはできない)。

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