『だが、情熱はある』のドラマ構成は革新的だ 髙橋海人×森本慎太郎を繋ぐ3つの軸

 また、この3つの軸が断続的ではなく、1つのキーワードで繋がっているところも、このドラマの巧妙さ。例えば、第1話では1995年の若林と山里が描写されている。高校2年生の若林は進路調査の紙を前に提出できず、空欄のまま。一方で、高校3年生の山里は「何者かになる」と書くも、何になるかは明確に決まっておらず、友人に「何者って?」とツッコまれ折りたたむ。このように、第1話は“進路調査票”が1つの軸として、ふたりの人生を繋げているのだ。

 さらに、第2話ではお好み焼きという共通項が。若林サイドは、幼少期に家族で行ったお好み焼き屋で父・徳義(光石研)がメニューにはない「焼きそばなしのお好み焼き」を無理にオーダーし、険悪なムードになったエピソード。山里サイドは、芸人になるべく関西の大学に進学し、エセ関西弁で意気揚々とお好み焼き屋に入るも、本場の関西人を前に圧倒されてしまう。この2つの苦い思い出を描き、繋がりを持たせている。

 ちなみに第2話に関しては、この“お好み焼き”が、山里は先輩・米原(宮下雄也)と、若林は春日(戸塚純貴)とつまむことで、ほんの少しだけ良い思い出に上書きされるのも、また良かった。

 SNSでの反響を見ると、このドラマを見るまで、2人の人間性を詳しくは知らなかったという人も多い印象。幅広い層の視聴者が楽しめるのには、交わってはいないけれども繋がっている2人の半生、そして私たちがテレビで見ている若林、山里の姿を行き来する構成によるドラマとしてのおもしろみがあるからではないだろうか。

 また、コアなファンの心をくすぐる細かすぎる演出やこだわりもちらほら。特に、2000年代前後にお笑いファンをしていた視聴者の懐かしさをくすぐる仕掛けも多く、放送時のSNS実況は見ていて楽しい。

 第5話では、山里がしずちゃん(富田望生)と出会い南海キャンディーズとして始動し、ナイスミドル(オードリーになる前の若林と春日のコンビ名)はオーディションの不合格が続く冬の時代に突入する予感。ここからドラマとして、どのように2人の人生を繋げるのだろうか。

■放送情報
日曜ドラマ『だが、情熱はある』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:髙橋海人(King & Prince)、森本慎太郎(SixTONES)、戸塚純貴、富田望生、三宅弘城、池津祥子、ヒコロヒー、渋谷凪咲(NMB48)、中田青渚、箭内夢菜、森本晋太郎(トンツカタン)、加賀翔(かが屋)、賀屋壮也(かが屋)、藤井隆、坂井真紀、白石加代子、光石研、薬師丸ひろ子
脚本:今井太郎
演出:狩山俊輔、伊藤彰記
プロデューサー:河野英裕、長田宙、阿利極
チーフプロデューサー:石尾純
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/daga-jyounetsu/
公式Twitter:@daga_jyounetsu

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