『サブスク彼女』は過激で挑戦的なドラマになる ABCテレビ×DMM TVの真の狙いとは?

誰かの一番になりたいけどなれない。そこには時代を超えた普遍性がある

ーーそんな中、ドラマ共同企画の第1弾として『サブスク彼女』という女性目線の漫画を題材にされた理由は何だったのでしょうか。

清水:もちろん、先ほどお話ししたように僕らが作ろうとしているコンテンツのメインターゲットは男性なんですが、とはいえ女性にも興味を持ってもらうためには何が必要なんだろうなと考えていた時に、毎日放送(MBS)の『明日、私は誰かのカノジョ』が配信でかなり視聴されていたんですよね。そんな中でたまたま原作と巡り合って、両者に共通するものを感じたといいますか、それが性の部分なのか、はたまたダークサイドの部分なのか分からないですけど、そこには若い女性の心を惹きつける何かがあるんじゃないかと思ったんです。どちらかと言えば『アカイリンゴ』は“どセンター”を狙った作品ですが、今回の場合はかなりチャレンジングといいますか、今どきの若者の恋愛観と現代の悲哀とがうまく合わさった形でもしかしたら男性にも女性にも興味を持っていただけるんじゃないかという淡い期待もありつつ……という感じですね。

久保田:それに、性に対する女性側のスタンスも変わってきたような気がするんですよね。まあ50歳を過ぎたおじさんが言うことではないんですが(笑)。でも以前よりは男女関係なく性についてもオープンに話せるようになったし、秘め事ではなくなってきたというか、SNSでも真正面から性に関する話題に切り込んでいける時代になってきた。そういう中でこのドラマは表面的に見るとDMMっぽいセクシャルな内容だなと思われるかもしれないですけど、決してそれだけじゃなくて、原作に「私は選ばれない」っていう台詞がありますが、そういう現代の女性が抱えている悩みと結びつくところも結構あるんじゃないかなと思います。

清水:フジテレビにいる時に『翼の折れた天使たち』というオムニバスドラマを手がけたことがあるんですが、あれがまさに『明日、私は誰かのカノジョ』と同じような感じで、やっぱり何年か経つと流行りが繰り返されるなと思っていて。だから、いわゆるセフレではないですけど、肉体関係はあるのに恋人には発展しない、誰かの一番になりたいけどなれないみたいな悲哀には、時代を超えた普遍性があるんじゃないでしょうか。個人的には原作を初めて読んだ時に今どきの若者にもこういう子たちがいるんだなって驚きましたし、もっと自分を大事にしなきゃダメよって思いましたけどね。こうやってドラマ化して煽ってるわりに心の中では……もうちょっと綺麗な心を持ってます(笑)。

久保田哲史氏

ーーのちにキャストの方も発表されると思いますが、おふたりはこれからどういった役者さんたちと一緒にお仕事をしていきたいですか?

清水:第一に性的な表現があることを受け入れてくれるかどうかだと思うんですよね。やっぱり男性向けのコンテンツとして性描写を盛り込む以上、そこに限定されてしまう部分はあって。今でこそBLジャンルのコンテンツが増えてきて風向きが変わりましたけど、ちょっと前は出演してくれる俳優さんがなかなかいなかったんですよね。それと同じように僕らが作るコンテンツに関してもまだまだ出演を躊躇される方が多いと思います。そんな中でも面白そう、やってみたいと手を挙げてくださる方とまずは一緒にドラマを作っていきたいですね。

ーーそんな中で、『アカイリンゴ』ではインティマシー・コーディネーターを導入されていましたよね。

久保田:今回の共同企画で制作するドラマはDMM TVでの配信、地上波でも深夜放送ということで自由度が高く、必然的に通常のドラマよりも過激な内容になってはくると思います。そうなると演じる役者さんの負担もかなり大きいので、そこはちゃんとケアしていく必要がある。それだけじゃなくてかなりチャレンジングな取り組みに参加してくださっているのだから、我々のドラマに出演したことがマイナスになるのではなく、少しでもプラスになるような道筋を作る責務は、DMM側にもABC側にもあると思いますね。

【PR】『アカイリンゴ』最終話・禁断の赤いリンゴ

ーーちなみにYouTubeやTikTokなど、手軽に観られるコンテンツが増えてる中で、今回のドラマのように30分なり1時間なりのドラマに目を向けてもらうためにはどういったことが大切だと思われますか?

清水:たしかに僕らの時代は1時間のドラマが当たり前だったのが、今だと地上波で30分枠のドラマでもちょっと長いなっていうふうになってきているのかもしれないですね。それにおっしゃった通り、YouTubeやTikTokのように短尺の動画が好まれ、若者はさらにそれを倍速視聴するみたいな習慣にどんどんなっていっている。ただあまり短いと起承転結をつけるのが難しいと思いますし、そういう視聴習慣にどうやって合わせていくかっていうのは正直なところ、まだ僕らの中でも答えが出ていない状態です。

久保田:結局、時間の取り合いですからね。清水が言ったようにあまり短いとストーリーにならないので、やっぱりドラマを作ろうと思ったらそれなり長尺になるとは思うんですが、その長さに見合った理由をしっかりつけてあげないと、若い人には観てもらえないんじゃないですかね。

ーー最後に改めてこれからの意気込みをお伺いしてもよろしいでしょうか。

(左から)清水一幸氏、久保田哲史氏

久保田:とにかくDMM TVの会員になってくださった方々に興味を持っていただけるドラマになればいいなということ。逆にドラマを面白いと思ってくださった方が、DMM TVの他のコンテンツにも興味を持ってくれたらいいなと。そうやってどんどん良い波紋が広がったらと思います。

清水:久保田さんがおっしゃる通り、相乗効果が生まれるのが一番ですが、とにかく僕は話題になればいいなと思っています。現段階ではまだこのドラマのどの部分が人々を惹きつけるのか、また観る人の心に刺さるかってことは我々としても未知数ですが、何かしらトピックスとして上がってくるような形になれば万々歳です!

■放送・配信情報
『サブスク彼女』
ABCテレビにて、5月7日(日)スタート 毎週日曜0:55〜放送 ※ほか地域でも放送予定
DMM TVにて、5月7日(日)スタート 毎週日曜0:55〜独占配信
出演:紺野彩夏
原作:山本中学『サブスク彼女』(日本文芸社)
脚本:川原杏奈
監督:小村昌士、大畑貴耶、脇坂侑希
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー 川村未来、森永恭平(レプロエンタテインメント)、加瀬将則(レプロエンタテインメント)、後藤和弘(isai)
音楽:坂本秀一
制作協力:レプロエンタテインメント/isai
制作著作:ABC
©️山本中学/日本文芸社 ABC

関連記事