『サブスク彼女』は過激で挑戦的なドラマになる ABCテレビ×DMM TVの真の狙いとは?
朝日放送(ABCテレビ)制作の連続ドラマを、DMM.comが運営する総合動画配信サービス「DMM TV」にて独占配信する共同企画が本格始動。その第1弾として、4月下旬よりABCテレビにて放送、DMM TVにて独占配信となるのが、ドラマ『サブスク彼女』だ。
本作は、Twitterで話題となった山本中学の同名漫画を原作としたもの。本命に選ばれない虚しさから、月額課金制の彼女=“サブスク彼女”になることを決意した女性たちを描く衝撃作となっている。なぜこの作品をドラマ化するに至ったのか、そもそも今回の共同企画が立ち上がった経緯とは。朝日放送グループホールディングスのコンテンツ開発局長・清水一幸氏と、DMM.comのプレミアム事業部コンテンツ戦略兼オリジナル制作責任者・久保田哲史氏に話を聞いた。
ABC×DMMドラマのブランディングが最重要課題
ーー今回始動するドラマ共同企画が立ち上がった経緯を教えてください。
清水一幸(以下、清水):僕らはもともとフジテレビに所属していて、簡単に言えばディレクターとプロデューサーという立場でずっと一緒に仕事をさせてもらってたんですよ。だから久保田さんが4年前、僕は一昨年にフジテレビを退社してからも、「一緒に何かできませんかね?」っていう相談はしてたんですよね。
久保田哲史(以下、久保田):そこで、関西のローカル局がこぞって深夜ドラマに力を入れているという話を聞いて。今はTVerでどこからでも地方局のコンテンツを楽しめる時代じゃないですか。だから関西に限らず、どこのテレビ局もそれに乗っかって生き残りを模索しているわけです。そんな中で清水のところでもTVerだけではなく、他のプラットホームともタッグを組んで深夜ドラマの知名度を上げていきたいと。一方で僕たちは昨年DMM TVを立ち上げて、これまではアニメ軸でやってきたけど、今後はドラマにも力を入れていきたいという気持ちがあった。だけど、やっぱりキー局のドラマをうちで配信するのはなかなか難しいとなった時に互いの利が一致したわけです。
ーーその時に、どういったドラマを制作していこうというお話になったのでしょうか。
久保田:DMM TVのオリジナルに関しては主に男性をターゲットにしていて、地上波では放送できない少々やんちゃなコンテンツをテーマにやってきたんですが、「こういう感じでやってくれないかな?」と清水にお願いしたら快諾してくれて、一発目に出てきたのが今年1月期にABCテレビで放送された『アカイリンゴ』だったんです。
清水:通常、配信系のドラマといえば、「胸キュン」とか「ドロドロ」といったワードがキーになる女性ターゲットの作品を作ることが多いんですが、DMM TVは男性向けのコンテンツを多く配信しているプラットホームなので、まずはそっちに振り切って『アカイリンゴ』という地上波で放送できるギリギリの過激な性描写も含めたドラマを制作しました。とはいえ、今回限りのお付き合いではなく、プロジェクト化してもっといろんなコンテンツが作れたらいいよねと。それこそお互いある程度手の内がわかってるからやりやすいですし、自社プラットホームを持っていない僕たちとしてもありがたいお話なので、ここは先輩に甘えるつもりで今回の共同企画に至った形になります。
ーー改めて、今回タッグを組むことで期待していることはありますか?
清水:まずは当たり前ですけど、より多くの人に観てもらうことですね。やっぱり一生懸命作ったコンテンツがあまり人の目に留まらずに終わっちゃうってすごく寂しいじゃないですか。だから関西で、しかも深夜にだけ地上波放送されていたら、観てもらえる機会が限りなく少ないところをこうやって独占配信してくださって、そこに行けばいつでも作品が観られる状況があるというのは、作り手側としても喜ばしいことなんじゃないかと。あとは、これをきっかけに何となくでも「ABCとDMMが組んだら、こういうコンテンツが出来上がるんだな」という印象付けができればいいなというふうには思っております。
久保田:やっぱり、これだけサブスク市場がレッドオーシャンに突入している中で、他と差別化するためにはブランディングが何より大事だと思うんですよね。観てくださる方々はもちろん、クリエイターや演者、出版社の方々など、いろんな人に我々が作るコンテンツのイメージを持っていただけたら、自ずと「これってABC×DMMっぽい企画だから、あそこに持って行こうよ」みたいな感じの流れが生まれてくるんじゃないかなと思います。そのためにはある程度積み重ねが必要ですし、ターゲットを絞ることが重要。そんな中で、これだけ徹底的にターゲットは男性ですと言って憚らないところって他にはあまりないですし、ある一定層には確実に認知を取れるジャンルなのではないかと思ってはいるところです。