『ラストマン』福山雅治×大泉洋の可能性 ノーマライゼーションの視点で時代の病根と対する

「あなたとは良いバディになれそうです」

 『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系)第1話が4月23日に放送された。ドラマの内容以上に演者の言動にこれほど関心が寄せられるコンビもいないだろう。福山雅治と大泉洋。日本を代表するエンターテイナーの2人が日曜劇場でタッグを組んだ。

 犯罪が多発する大都市東京に投入された最終兵器、その名も“ラストマン”。卓越した捜査能力で事件を解決に導くアメリカ育ちのFBI捜査官。彼の名は皆実広見(福山雅治)。皆実には公然の秘密があった。杖を手に事件現場に降り立ち、アイカメラで周辺の状況を把握する。皆実は目が見えないのだ。

 皆実と組んで捜査を遂行するのは警部補の護道心太朗(大泉洋)。父が元警察トップで兄が将来の警察庁長官候補という警察一家に生まれた正義感の塊のような男だが、犯罪を憎む心が強すぎて暴走する一面もある。日米合同捜査チームで心太朗は皆実の案内役に任じられ、ともに事件現場に足を運ぶことになった。

 ノーマライゼーションの潮流が日曜劇場に押し寄せつつある。障がいを持つ主人公と健常者のコンビはいろいろな点で定型を逸脱していた。焦点を結ばない視線が見通すのは犯人の内なる思念。外界の情報を視覚以外から得る皆実は鋭敏な聴覚を備える。通常の数倍の言語情報を速聴でインプットし、指を鳴らした反響音でソナーのように周囲との距離を測る。見えないことがハンディではないことを皆実は示した。

 相手の表情を見ずに話す分、皆実は内心の感情が素直に顔に出るようだ。苦虫を噛み潰したような心太朗は、対照的に本音を押し込めて鬱屈としている。サポートが必要なことに加えて、つかみどころのない皆実に心太朗はペースを乱されっぱなしだ。言葉と表情を介して伝わる2人のかけ合いは時にユーモラスで、非対称なコミュニケーションを通じてそれぞれの背景や心の機微が垣間見えた。

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