『らんまん』に朝ドラ定番の“後の親友”登場? 若旦那となった万太郎の成長と不安

 そして、綾(高橋真彩)と竹雄(南出凌嘉)も相変わらず、目を離したすきにどこかへいなくなる万太郎に手を焼いている。二人が気がかりなのは、この春から名教館に通うことになった万太郎が先生や他の子どもたちと上手くやれるかどうかということ。というのも、名教館は100年以上の歴史を持ち、幕末の志士たちや優秀な人材を多数輩出した由緒ある佐川家領主深尾家の学問所なのだ。町人の子で通うことを許されたのはたった2人。万太郎と、その友人で町医者の息子・寛太(齋藤潤)だ。

 この寛太が万太郎の登校初日にトラブルを引き起こす。ただでさえ、名教館に通うことを渋っていた万太郎を待ち受けていたのは、武家の子息であることを誇りに思う子どもたち。いくら名字帯刀を許された豪商の息子とはいえ、町人である万太郎は完全にアウェイで座敷に入ることすら許されない。

 それは寛太も同じ。万太郎に持たされた豪華な弁当を食べながら、「弁当だけは負けんき」「町の寺子屋の方がよっぽどええが」と不満をつらつら述べる。それが明治維新で武家社会が終わったことで路頭に迷うケースが多く、同時にプライドもへし折られた武家の子どもたちに対する挑発になったのは言うまでもない。万太郎と寛太が名教館に通い始めた、それ即ち武士と町人の立場逆転を表していた。コミカルに描かれてはいるが、当時としてはかなりシビアな問題なのである。

 これによって、目をつけられてしまった万太郎は広瀬佑一郎(岩田琉生)という2人の学友を連れた少年に竹刀を突きつけられる。とっさに控えていた竹雄が無礼を詫びるも彼らの虫の居所はおさまらず、万太郎は佑一郎と剣術の稽古をすることになった。仲良くしようとしているだけと口では言いながらも、佑一郎の目は万太郎本人というよりは武士を敬わぬ世間への怒りに満ちている。

 だが、『あさイチ』(NHK総合)のオープニングで博多大吉が語ったように、幼少期に現れた主人公のライバルはのちに生涯の友となることが朝ドラでは割と定石となっている。例えば、成長した佑一郎を演じることになる中村蒼が、『エール』で演じた鉄男も幼少期の頃は主人公の裕一(窪田正孝)をいじめるガキ大将だったが、二人はのちに作詞家・作曲家として共に活躍する盟友となった。現実世界でも反発し合っていた相手と何かの拍子で仲良くなることはある。少なくとも泣いて逃げ出さなかった万太郎を、いつか佑一郎も認めてくれるのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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