木村拓哉が語る『風間公親－教場0－』と前2作との違い　テレビドラマの見方の変化も

共演者の表情からは「来てしまった……」という思いも？

ーー中江監督とは、本作を作り上げていく上で具体的にどういったお話をされたんですか？

木村：スペシャルドラマを2本やって、「もうちょっと観てみたい」という視聴者の皆さんの気持ちをいただいた上で、どういうものをやろうか、どういうふうに皆さんにドキドキしてもらおうかというところですね。ただ、表現が難しいんですけど、今はいろんな犯罪があるじゃないですか。どんなに踏ん張っても頑張っても、網の目をくぐり抜けるような現実的な犯罪。それに対して本作は、フィクションの要素がバランス的には多いわけです。そして『教場』というスタイルで続けていたものを、「教場」を後ろに「風間公親」を前に持ってくる作業ですから、例えば僕の大好きな『古畑任三郎』（フジテレビ系）のように、刑事ものにはいろんなアプローチがあると思います。彼のパーソナルをどこまで見せるかも話しました。不思議で不気味なんだけど、「なんでこの人、こんなに芯突いてるんですか？」って。今回、水を飲む、鼻をかむ、咀嚼する、彼のそういう人らしい部分は、監督から一切求められませんでした。そういう意味も含めて、さっきお話したように「フジテレビの月曜9時にこういう陳列をするんだ……」という思いがあります。

ーー「月9」という枠だとこれまでに放送されてこなかったジャンルですよね。

木村：とはいえ、元も子もないことを言っちゃうかもしれないですけど、時間とお金をかけて大人が本気になってテレビドラマを作っても、下手したらテレビの電源を入れる必要もないじゃないですか。観る方たちの選択肢が豊かだから。スタッフにもいますからね、「こういうの観たことある？」って聞いたら「家にテレビないんで」っていう若い子とか。「この間、中江さんと木村さんがやったドラマ観ました」って言ってくれて「どうだった？」って聞いたら「すごいお話が熱い感じで！」「スマホで観ました」って。「あ、うん。そっか……」っていう（笑）。本当に、観てくださる皆さんのHow toが豊かになっているし、それが面白い。見逃し配信もそうだし、「毎週、この時間帯のこの番組は予約する」って予約しておいて、観たい時に一気にまとめて観るとか。

――たしかに。

木村：シビアに「そっか……」って、自分が取り組む熱意とは別に、どこかラインを引いて考えないきゃいけないなという部分もありますけど、「この作品に自分は来たんだ」っていう若い共演者の皆さんの取り組み方やプロ集団のスタッフ、非常に面白い責任が毎日転がっているので、現場の熱は高いです。

ーーSPドラマでは、撮影現場でも「風間教官」として立たれていたそうですが、今回も「風間公親」として立っていたのでしょうか。

木村：撮影現場においては今回、新米刑事役を演じてくださる方たちとの話なので、僕は何も構えることもなく、フラットな状態でやらせていただいています。ただあくまで僕の感じ方ですけど、前回の2作があの空気感だった分、役者さんの表情からは「来てしまった……」っていう思いも感じますね（笑）。今、世の中的には「リスペクトトレーニング」っていう言葉が実在しているくらいですので、彼の指導の仕方が今の世の中に合ってるかどうかについては非常に疑問を持たれるところではあるんですけど、そこはフィクションという強い盾を振りかざして作っていきたいと思います。

ーーこれまでの“教官”がとれて、時間を戻して風間公親を演じることで意識していることはありますか？

木村：「風間公親として」という意味では先ほどもお話したように、風間は本当に生活感のない、人間性を感じにくいキャラクターなので、やっていて違和感を感じることはたびたびあります。どういう状況においても笑顔がないので、「こういう人、本当にいるんだろうか？」って。それは自分で演じておきながら、冷たい温度のシーンをやればやるほど、重ねていけば重ねていくほど感じますね。 だからカメラに映らないところで、本番にステップアップしていく途中では、非常にふざけたくなります（笑）。それは監督もよく付き合ってくれるというか、むしろ監督がそっちの振り幅にいくことがあるんですけど。本番ではもちろんやらないですけどね（笑）。

■放送情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親－教場0－』
フジテレビ系にて、4月10日（月）スタート 毎週月曜21:00～21:54放送
※初回30分拡大（21:00～22:24放送）
出演：木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作：長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』（小学館）
脚本：君塚良一
プロデュース：渡辺恒也、宋ハナ
演出・プロデュース：中江功
制作・著作：フジテレビ
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