『大奥』現代に繋がる課題を示したシーズン1最終回 冨永愛の力強い一言が希望を残す

 本作はパラレルワールドが舞台だが、私たちが生きている世界もその地続きにあるのではないだろうか。赤面疱瘡という奇病が流行した歴史は存在しないものの、流行病や戦争、災害など様々な危機がこれまでも到来してきた。ちょうど私たちも3年前から続くコロナを乗り越えつつあるが、少子高齢化は進むばかり。その中で時代と逆行した「産めよ、殖やせよ」の方針に苦しめられている人もいる。けれど、本当に大事なことは何なのか。千恵や綱吉のように苦しむ者が現れぬよう、持続可能な社会を作っていくためには。現代に繋がるラストは私たちにそうした問いを投げかけているように思えた。

 同時に吉宗の「この国は滅びぬ」という確信を持った一言が希望を残す。将軍としての威厳はありながらも、親しみを失わぬ冨永愛が演じた吉宗は最後までこの作品の光だった。ただ、光あるところに影あり。側用人の久通(貫地谷しほり)は本人が知らないところで彼女を将軍にするため、多くの人を葬り去った。没日録の紛失も村瀬の死も彼女が招いたことである。

「一睡の夢を見させていただきました」

 自分の手を汚してまで見たかった、吉宗が国を導いてく様を見届け久通はこの世を去る。吉宗もまた赤面撲滅という課題を残して眠りにつくが、彼女たちの夢はこれからも家重と龍、そして最後に登場した平賀源内(鈴木杏)、青沼(村雨辰剛)、黒木(玉置玲央)らが受け継いでいく。秋から始まる『大奥』シーズン2が楽しみだ。

■放送情報
ドラマ10『大奥』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:福士蒼汰、堀田真由、斉藤由貴、仲里依紗、山本耕史、竜雷太、中島裕翔、冨永愛、風間俊介、貫地谷しほり、片岡愛之助ほか
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
主題歌:幾田りら
音楽:KOHTA YAMAMOTO
プロデューサー:舩田遼介、松田恭典
演出:大原拓、田島彰洋、川野秀昭
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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