『舞いあがれ!』に詰まったテレビドラマとしての3つのポイント 重要だった久留美の言葉

 舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)が結婚。新婚生活がはじまった。岩倉家の2階をリフォーム、ゆるい2世帯住宅のようにして、舞と貴司とめぐみ(永作博美)の3人暮らし。ゆるい2世帯住宅とは、玄関やキッチン、リビングなど共用部はあるが、2階の夫婦の部屋に水回りを設けているから。ちょっとしたことでいちいち1階に降りなくても2階で事足りるようにしてあるのだろう。

 朝ドラことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。第21週には、舞と貴司の幸福な結婚をはじめとして好ましいところがいくつもあった。3つあげてみたい。

 ひとつ目は、貴司に男としてのプレッシャーを付与していないことである。結婚するとなったら、経済的に自立していることが前提になりがち。そうなると貴司は不利である。デラシネも短歌もお金にはなりそうにない。歌集を出したとはいえ、直木賞作家とはわけが違う。

 婿になったわけではないながら岩倉家の2階に住むわけは、めぐみをひとりにしたくないという思いやりや、作劇的な都合や、浩太(高橋克典)と勝(山口智充)の「梅津 岩倉」ネタをやりたかったのだろうか……等々、多々想像できるが、現実的に貴司の経済状態では新居を借りるのは難しいのではないだろうか。

 かといって舞が全部負担して、貴司が頼り切るような状況にはしない。家事の分担も、明らかに時間があるのは貴司だが、舞は彼に自分の時間を作ってあげたいと気遣う。じつに好ましい。過去の朝ドラは女性の自立がテーマになることが多いため、どうしても極端になりがち。父や夫が働かず、代わりにヒロインが奮起するというようなパターンになっていた。『舞いあがれ!』では経済的な面で他者を責めることがいっさいない。インサイダー取引に手を出した悠人(横山裕)すら身内の間では不問に付した形である。

 現代的にリフォームされた2階で、お茶を飲んだり、パソコンを見たりしながら語らう舞と貴司はデラシネのちゃぶ台をはさんで語らう様子となんら変わらない。穏やかに相手の話をちゃんと聞き、建設的な意見を言う。『舞いあがれ!』では舞と貴司に限らず、たいてい誰もが、相手の話をちゃんと聞く。ちゃんと質問して、話をさらに発展させようとするのだ。それが好ましいところの2点目である。

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