メタルヒーローが東映特撮史にもたらした革新性 骨太な成長物語をDVDコレクションで辿る
東映制作の特撮作品の歴史を振り返ると、1960年代の『仮面の忍者 赤影』(1967年)、1970年代の『仮面ライダー』(1971年)及び『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)と、現在に至るまで長く愛されるエポック的な等身大ヒーローが時代の節目ごとに生まれてきている。そして1980年代に特撮史に新風を巻き起こしたのが、『宇宙刑事ギャバン』(1982年)に端を発するメタルヒーローシリーズだ。仮面ライダーでもスーパー戦隊でもない、全く新しいヒーロー像として『宇宙刑事ギャバン』は、それまでの変身ヒーローのイメージを大きく変えるほどの革命を起こした。昭和に誕生したメタルヒーローたちは、平成に入ってもスーパー戦隊や仮面ライダーとのコラボ映画で度々復活するほど愛され、まさにギャバン以前/以降と区分けできるほど東映特撮ヒーローに多大な影響を与えたのだ。
メタルヒーローの第1弾『宇宙刑事ギャバン』の何が凄かったのか? まず主人公の一条寺烈を演じる大葉健二がジャパン・アクション・クラブ(以下、JAC)所属の俳優で、もともとスタントマン出身だけに身体能力が高かったこと。本編では高所からの飛び降りに乗馬、トランポリンを使った宙返りまで身を挺したアクションの多くを本人が演じている。当時の大葉は、スーパー戦隊シリーズ2作品で既にレギュラー出演の経験があったが、単独ヒーローとしての主演は本作が初だ。それだけに本作に賭ける意気込みも強く、スタッフとの打ち合わせでは積極的に意見を出していたという。
基本的に1話完結のスタイルで制作されている『宇宙刑事ギャバン』だが、全編を貫く縦糸として行方不明の父探しがドラマに織り込まれている。ギャバンはバード星出身の宇宙刑事の父と、地球人の母との間に生まれた子であり、地球上で名乗っている一条寺は母の姓だ。彼の父は地球で消息を絶っていて生死も定かではない。しかしきっとどこかで生きていると望みを持ちながら、母の故郷・地球で折に触れて遠き父に思いを馳せる。主人公の故郷に絡めたサイドストーリーは、メタルヒーロー第2弾にして宇宙刑事シリーズの第2作『宇宙刑事シャリバン』(1983年)で大きく開花することとなり、第3作『宇宙刑事シャイダー』(1984年)では、訓練半ばで着任した未熟な宇宙刑事の成長ドラマが描かれる。それらの骨太さは、メタルヒーローシリーズで5年にわたってメインライターを務めた脚本家・上原正三の手腕あってのことだろう。