メタルヒーローが東映特撮史にもたらした革新性 骨太な成長物語をDVDコレクションで辿る

 東映制作の特撮作品の歴史を振り返ると、1960年代の『仮面の忍者 赤影』(1967年)、1970年代の『仮面ライダー』(1971年)及び『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)と、現在に至るまで長く愛されるエポック的な等身大ヒーローが時代の節目ごとに生まれてきている。そして1980年代に特撮史に新風を巻き起こしたのが、『宇宙刑事ギャバン』(1982年)に端を発するメタルヒーローシリーズだ。仮面ライダーでもスーパー戦隊でもない、全く新しいヒーロー像として『宇宙刑事ギャバン』は、それまでの変身ヒーローのイメージを大きく変えるほどの革命を起こした。昭和に誕生したメタルヒーローたちは、平成に入ってもスーパー戦隊や仮面ライダーとのコラボ映画で度々復活するほど愛され、まさにギャバン以前/以降と区分けできるほど東映特撮ヒーローに多大な影響を与えたのだ。

 メタルヒーローの第1弾『宇宙刑事ギャバン』の何が凄かったのか? まず主人公の一条寺烈を演じる大葉健二がジャパン・アクション・クラブ(以下、JAC)所属の俳優で、もともとスタントマン出身だけに身体能力が高かったこと。本編では高所からの飛び降りに乗馬、トランポリンを使った宙返りまで身を挺したアクションの多くを本人が演じている。当時の大葉は、スーパー戦隊シリーズ2作品で既にレギュラー出演の経験があったが、単独ヒーローとしての主演は本作が初だ。それだけに本作に賭ける意気込みも強く、スタッフとの打ち合わせでは積極的に意見を出していたという。

 キャラクター造型の面では今までの等身大ヒーローの多くが、タイツ生地やレザー生地など布製のコスチュームだったのに対して、ギャバンはFRPと呼ばれる強化プラスチックで頭部から手足まで全身を覆うヒーロースーツが作られた。しかも硬質パーツの表面にメッキ加工を施したメタリックな外見で、両目とボディ各部の電飾が暗闇で発光する姿はメインターゲットの子どもたちの心をわし掴みにしたのだ。毎回のラストバトルに於いてもヒーローが大型戦闘母艦を召喚し、凄まじい火力をもって敵機を掃討、爆破する派手な見せ場を設けている。こうした試みの数々が視聴者を釘付けにして成功を収め、以降のメタルヒーロー作品にも“主役サイドにJAC所属の俳優を起用する”、“ヒーローの大型戦闘母艦が敵を圧倒する”、“敵組織のボスの声を声優の飯塚昭三もしくは渡部猛が演じる”など『宇宙刑事ギャバン』でヒットした要素が、数年にわたって受け継がれることとなった。

 基本的に1話完結のスタイルで制作されている『宇宙刑事ギャバン』だが、全編を貫く縦糸として行方不明の父探しがドラマに織り込まれている。ギャバンはバード星出身の宇宙刑事の父と、地球人の母との間に生まれた子であり、地球上で名乗っている一条寺は母の姓だ。彼の父は地球で消息を絶っていて生死も定かではない。しかしきっとどこかで生きていると望みを持ちながら、母の故郷・地球で折に触れて遠き父に思いを馳せる。主人公の故郷に絡めたサイドストーリーは、メタルヒーロー第2弾にして宇宙刑事シリーズの第2作『宇宙刑事シャリバン』(1983年)で大きく開花することとなり、第3作『宇宙刑事シャイダー』(1984年)では、訓練半ばで着任した未熟な宇宙刑事の成長ドラマが描かれる。それらの骨太さは、メタルヒーローシリーズで5年にわたってメインライターを務めた脚本家・上原正三の手腕あってのことだろう。

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