『女神の教室』ロー生たちの言葉の応酬に目が離せない 教師たちが描くもうひとつの“青春”

『女神の教室』言葉の応酬に目が離せない

 民法第695条「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いを止めることを約することによって、その効力を生ずる」。

 第1話につづいて“模擬裁判”に臨むロー生たちの姿を描いた1月30日放送の『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)第4話。第1話では弁護側と検察側に分かれての刑事裁判であったが、今回は被告側と原告側に分かれての民事裁判である。あえて答えのない事案を選んで学生たちに模擬裁判を行わせた柊木(北川景子)。真摯にそれぞれの依頼人の立場に立って裁判を進める学生たちと、そこで見出される“和解”という結論。今回のエピソードは、非常に見応えのある好内容ではないか。どうしたって見栄えも派手さもない民事裁判を描いているのに、その言葉の応酬に目が離せない。終盤の模擬裁判のくだりは、ただただ見事であった。

 今回学生側でフォーカスが当たるのは真中(高橋文哉)だ。成績も良く、要領も良い反面、どこか周囲を見下しているような、裏表のありそうな振る舞いを見せてきた彼が抱えるプレッシャーと葛藤、そしてそこからのある種の救済が描かれる。社会人になった学生時代の友人たちから外資企業に落ちた過去を掘り返され、家に帰れば妹がその企業から内定をもらったと喜んでいる。自分が望んだものを手にできないことから芽生える焦りと不安。それが「弱者を救う弁護士になる」という目標にプレッシャーとしてのしかかり、テスト中にも脳裏によぎり、テスト後に同じ目標を持つ水沢(前田拳太郎)とぶつかってしまうのだ。

 模擬裁判でずっと黙り込んでいた被告側代理人である真中は、おもむろに和解の提案を申し出て周囲を騒然とさせる。弁護士の役割は裁判に勝つことだと考え、勝ち目がないとわかった途端に逃げ出す方法を考えてさえいた彼のなかに、“勝ち”でも“負け”でもない“譲歩”の精神が生まれる。それはすなわち、彼のなかで自分の弱さを認め、それと向き合うことにほかならない。そして模擬裁判での和解交渉を経て得るのは、水沢との和解である。冒頭に記した民法第695条。それがこのエピソードの核にあり、法律の言語が学生たちの日常に染み渡った瞬間だ。

 それは前回の照井(南沙良)と桐矢(前田旺志郎)の関係の変化とも良く似ており、彼ら実務演習クラスの5人のバランスが非常に良いものになりつつあることを予感させる。この真中のように、どこか掴みどころのない学生の変化というのは、本作のような学園・教室ドラマにおいては物語上の大きなターニングポイントになりうる。たとえば『GTO』(関西テレビ系)で窪塚洋介が演じた菊池であったり、2021年版の『ドラゴン桜』(TBS系)で鈴鹿央士が演じた藤井であったり。そういった意味では、タイトルにある“青春”の部分はここからより強固なものになっていくと思わずにはいられない。

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