『DOCTORS』は森山卓の成長物語 沢村一樹VS髙嶋政伸の喧嘩をもっと観ていたい

 新春ドラマスペシャル『DOCTORS~最強の名医~ファイナル』(テレビ朝日系)が1月3日に放送される。

 本作は、『DOCTORS~最強の名医〜』(以下『DOCTORS』)のSPドラマ。『DOCTORS』は2011年に連続ドラマがスタートした医療ドラマで、外科医の相良浩介(沢村一樹)が、赤字経営の堂上総合病院を変えていく姿を描いた物語だ。連続ドラマはシーズン3まで作られ、SPドラマが4本作られてきた。

 テレビ朝日の医療ドラマや刑事ドラマは、物語自体は1話完結だが、10年以上シリーズ化したことで大河ドラマ化し、各登場人物が成長、変化していくのが面白い。

 『DOCTORS』の場合、主人公の相良はあまり変わらないのだが、ライバル役の外科医・森山卓(髙嶋政伸)は紆余曲折が激しい。シーズン3では院長の堂上たまき(野際陽子)がバカンス旅行で病院を留守にしたことで甥の森山は院長代理に、2018年の新春スペシャルでは、たまきが診療所を開くためブータンに移住したことで新院長に就任した。

 今回のSPドラマも物語の中心にいるのは森山だが、「ファイナル」と銘打った作品で、彼の物語が細かく展開されていく様子を観ていると、なるほど『DOCTORS』とは、森山卓の成長物語だったのかと、感慨深かった。

 患者のことを第一に考えて行動する正義のドクター・相良と、自分の立場と名声しか考えていない悪のドクター・森山の対決に思える『DOCTORS』だが、物語は奇妙なねじれ方をしている。善良で優しい外科医に思えた相良だが、次々と罠をしかけてくる森山と仲間の医師たちからの嫌がらせを逆手に取り、自分に都合の良い方向に話を持っていく戦略家としての一面もある。その手口は実に巧妙で、単純な正義の味方とは言い難い。

 そんな相良の罠にハマって、森山は懲らしめられるのだが、それが毎話続き、彼のダメさが際立ってくと妙な哀愁が滲み出るようになり、どうにも彼のことが嫌いになれなくなる。森山は幼稚で傲慢で嫉妬深く人間性は最悪だ。だが、医療器具を使って折り紙を折れるほどの腕を持つ腹腔鏡手術のスペシャリストで、医者としての腕があることによってギリギリのところで信頼を保っている。

 次第に森山が最重要人物となっていくのが本作の面白さで、作り手が森山を面白がっているのが観ていて楽しい。

 脚本を担当しているのは『HERO』(フジテレビ系)などで知られる福田靖。近年は『未来への10カウント』(テレビ朝日系)、『オールドルーキー』(TBS系)などの作品で知られる福田は職業ドラマの名手で斬新な切り口を毎回用意する。

 『DOCTORS』の場合は天才ドクターの物語の中に病院経営や医者と看護師の人間関係といった会社ものの要素を盛り込むことで病院経営というビジネスの側面も大きく扱われた。一方、福田作品の大きな魅力は「笑い」だが、『DOCTORS』では、感情的になって相良をハメようとする森山が毎回、裏をかかれて、ひどい目に合う様子が、アメリカのギャグアニメ『トムとジェリー』のようだ。コメディドラマとして楽しめたからこそ、本作はここまで長く愛されたのだろう。

 本作のシリアスとコメディのバランスは毎話絶妙だったが、他の俳優が演じていたら全く違う作品になっていただろう。

関連記事