『TOKYO MER』鈴木亮平の絶対的な安心感 長い助走期間が培った表現の源泉

 鈴木の魅力がアクションもこなせる演技面にあることは間違いないが、役作りに関しては他の追随を許さない。20キロを超える増減量と肉体改造も辞さない鈴木であるが、役柄のレパートリーは幅広いという表現をはるかに超える。『西郷どん』(NHK総合)や映画『俺物語!!』での巨大化、『天皇の料理番』(TBS系)の結核で死の床にある憔悴しきった姿はよく知られる。前述した『HK 変態仮面』シリーズや『銭形警部』(日本テレビ×WOWOW)などコスプレ方面にも強い。極めつけは悪役の入れ込みぶりである。映画『TOKYO TRIBE』のメラ、『孤狼の血 LEVEL2』の上林、『土竜の唄 FINAL』の轟烈雄は悪逆非道っぷりが徹底しており、観ていてすがすがしいくらいだ。『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)の斎藤は清濁併せ吞む官能的なキャラクターだった。善玉・悪玉に限らず、どんな年代、職業、体格のキャラクターをオファーしても期待以上の仕上がりを見せてくれるのが鈴木である。

 長い助走期間で鈴木が培ったのは役柄の多彩さだけではない。脇役としての日々は役者としての洞察を深め、多角的な視点から役をとらえる眼を養った。主演を近くから見続けてきた鈴木は、交友の深い小栗旬や共演者の姿を通じて自分なりの主役像を構築してきた。主演俳優は異なる時代背景と主人公の生き様を背負い、仁王立ちで作品を支える。簡単に摩耗しない表現の源泉、演者の強靭な体幹は下積み時代に鍛えられたといえよう。

 話を『TOKYO MER』に戻すと、喜多見には悲しい生い立ちがあり、それが災害現場に率先して飛び込むキャラクターにつながっている。とびきりの笑顔とリーダーシップの陰で誰よりも多くのものを背負ってきたのが喜多見で、振れ幅の大きさと深い感情表現が求められる喜多見役に鈴木以上の適任はいない。俳優としてあらゆる役柄を経験した鈴木だから安心して喜多見を託せるし、鈴木にしか演じられない喜多見がいる。1400万都民の命を預かる「TOKYO MER」。鈴木の背中が放つ絶対的な安心感を感じてほしい。

■公開情報
劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』
4月28日(金)全国公開
出演:鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー(SixTONES)、フォンチー、菜々緒、杏、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子
監督:松木彩
脚本:黒岩勉
配給: 東宝
©2023劇場版『TOKYO MER』製作委員会
公式サイト:https://tokyomer-movie.jp/
公式Twitter:tokyo_mer_tbs
公式Instagram:tokyo_mer_tbs

■放送情報
ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』リピート放送
TBS系にて放送 ※一部放送されない地域あり
1月2日(月)12:00〜15:00
1月3日(火)6:00〜11:50、12:00〜15:00

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