2022年の年間ベスト企画

藤原奈緒の「2022年 年間ベストドラマTOP10」 ドラマを通して向き合う「生きること」

 『17才の帝国』、『空白を満たしなさい』、『一橋桐子の犯罪日記』と、全5話構成で作られたNHK土曜ドラマ3作品は、10・20代、30代、70代から見た社会の俯瞰としても興味深い。『17才の帝国』、『空白を満たしなさい』がどちらも「逃げ切れる世代」として上の世代を見ている中、桐子(松坂慶子)は「刑務所しか安住の場所はない」と思い詰めるほどの現状を生きている。どの世代にしたって生きづらいこの現代社会において、どう生きるかということを考えさせてくれた作品群である。なにより『空白を満たしなさい』は、人の心の一様でなさをきめ細やかに掬い取り、それを含めた「自分を受け入れる」ことの大切さを描いたという点で素晴らしかった。『17才の帝国』は、若手俳優陣の煌めきはもちろん、描かれた世代間の葛藤の物語含め、何年か経過した後、彼らがどう変化していくのか、続きを観てみたいと思わせる作品である。

 渡辺あや脚本の『エルピス』も同様に、現代社会を鋭く照らす。ただ正義に燃える主人公たちが闇に突撃して勝つという話ではなく、彼女たち自身も流れに吞み込まれる危うさも描いているところがいい。特に「食べられない/食べられる」という感覚を通して、彼らの感情の揺れや、心を通わせる様が描かれることは、多くの優れた「食べる」ドラマが乱立する中で、これまでにない手法として印象的だった。そしてその主人公と視聴者との間の身体を通した痛みの共有とも言うべきものは、それだけで、密接な共犯関係を生む。

 坂元裕二脚本の『初恋の悪魔』は、ただひたすらに愛おしく、登場人物たちを見ていた。特に第2章から終盤にかけて飛躍する物語の強度は凄まじいものがあり、一見弱そうな彼らが、権力に守られた得体の知れない悪とどう対峙するか、そういう意味では『エルピス』と共通したものを感じる。

 『拾われた男』は生きることの愛おしさとままならなさに満ちた作品。前半部分で、愛すべき人たちとの青春群像と、彼が“拾った”夢と愛の幸せを描く一方で、後半部分で、うっかり自ら手放してしまった愛おしい記憶の断片をかき集め、「今はもういない人」と再び出会う物語だった。『シジュウカラ』は特に10話以降の炸裂の仕方が素晴らしく、大九明子監督作品として、忘れがたいものがあった。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』総集編(全4章)
NHK総合にて、12月29日(木)13:05~17:40 放送(中断ニュースあり)
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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