田中俊介×山谷花純×平波亘監督『餓鬼が笑う』鼎談 『鎌倉殿の13人』での奇跡的な再会も

 骨董屋を目指す青年の愛と幻想の旅を描いた映画『餓鬼が笑う』が12月24日に公開される。今泉力哉、市井昌秀、池田千尋ら多くの若手監督を助監督として支えてきた平波亘がメガホンを取った本作で主演を務めたのは、監督と旧知の中の田中俊介。オーディションを経て出演が決まった山谷花純がヒロイン役を務めている。今回、骨董屋志望の青年・大貫大を演じた主演の田中、大が惹かれる看護師・及川佳奈を演じた山谷、そして平波監督による鼎談が実現。奇想天外な物語が生まれた背景から、作品にかける思いまでを語ってもらった。【インタビューの最後には、コメント動画&サイン入りチェキプレゼント企画あり】

奇想天外な物語に思わず「なんじゃこれ」

ーーまずは平波監督、『餓鬼が笑う』を制作することになった背景について教えてください。

平波亘(以下、平波):ある現場で、古美術商の大江戸康さんという方と出会ったんです。それから交流を深めて、大江戸さんから「自分の若かりし頃の経験などをもとに書いた脚本をしたためている」と言われて、その本を読ませていただいたことが始まりでした。その時点ですでに主人公の大が骨董屋を目指しながらも地獄めぐりをしていくという奇想天外な展開が描かれていたんですけど、その作品の監督をしてくれないかと言われまして。最初の脚本は普通に撮ったら製作費が10億円ぐらいかかるんじゃないかという目眩く大冒険だったんですけど、予算感のことも考えながらリアリティラインに落とし込みつつ、監督として自分なりにどうやって物語に接続していくかを考えながら進めていきました。当初の脚本からは、佳奈の物語を膨らませたり、記憶をめぐるラブストーリー的な要素を足したりしています。

ーー大江戸さんが書いた脚本のストーリーに惹かれた部分もあったんですか?

平波:それはそうですね、自分が関わる作品が、わりと身の回りの想像しうる範囲での話だったりすることが多かった時期もあって、こんな話に巡り会えることはなかなかないなと思ったので。それと大きかったのは新型コロナですね。よく覚えているのが、大江戸さんにお話いただいたのが2020年の4月7日、ちょうど一番最初の緊急事態宣言が出た日なんですよ。そういう日常が崩れ始めていく状況でも、ものづくりをしていかないといけないという状況の中で、モラトリアムを抱えた若者が右往左往しながら地獄をめぐってボコボコにされながら、それでも生きていくという物語に出会って、この時代にやる意味が自分の中ですごくあるなと思ったんです。それでどんどん話が進んでいき、主人公の大を誰に演じてもらおうかとなったときに、自分が助監督を務めた映画でもご一緒していた田中くんにお願いしようと。田中くんは、過去に変なタコに絡まれる役とかをやっていたこともあって……。

田中俊介(以下、田中):ありましたね! 変なタコみたいなのに絡まれる映画が(笑)。

平波亘監督

平波:なので、なんでもやってくれるんだなと思って(笑)。でもやっぱり、白石晃士監督の作品だったりで、揉みくちゃにされながらあがいているイメージが田中くんにはすごいあったのと、田中くんも俳優としてさらにステージを上げてやっていこうという時期だったと思うので、そういったタイミングで主演映画として一緒にご一緒できると、自分の中でもしっくりくるなと感じたんですよね。

田中:僕もお話をいただいて、純粋に嬉しかったです。平波さんとは本当に何度も現場で一緒にものづくりさせてもらっているので、そういう方から「主演でお願いします」というお話をいただく喜びはすごく大きかったです。平波さんの映画に対する想いも伝わってきていたので、信頼感や安心感はすごくありました。ただ、物語については正直、「なんじゃこれ」って思ったんです。

一同:(笑)

田中俊介

田中:本当に奇想天外で。どんな映画になるんだろうっていう不安というか、未知数なところがあったんですけど、でもこれを平波さんのもとでやることへの好奇心があったので、台本を一気読みして即決しました。

平波:巻き込まれ方の主人公なので、どうリアクションをしていくかがこの主人公のすごく大事なところではあって。そこが、田中くんのニュートラルさで「いける!」と思ったんですよね。こういうファンタジー要素を孕んでいる作品って、ともすればちょっとチープというか、滑稽になってしまうこともあるんですけど、僕もやっぱりフィクションの力を信じているというか。そういう部分があるので、田中くんのフィクション性とナチュラルさが同居している感じがすごくいいなと思って、ご一緒したいなと思いました。

ーー山谷さんはオーディションで参加することが決まったんですよね。

山谷花純(以下、山谷):そうですね。今回オーディションに参加させていただいて、平波さんともはじめましてでした。だからある意味、すでに出来上がっているチームの中にお邪魔させていただく感覚に近くて。みなさんが積み重ねてきた時間は私にはどうしても埋められないと思うので、新しい関係性を築けたらいいなという思いで臨みました。ただ私も、脚本については「わからないな」というのが正直な気持ちでした(笑)。

一同:(笑)

(左から)山谷花純、田中俊介、平波亘監督

山谷:オーディションを受けているときもずっとモヤモヤしていて(笑)。でももしオーディションに落ちて、そのままモヤモヤしたまま終わるのは嫌だったので、オーディションでのお芝居が終わったあとに、「この2人のストーリーは何回続いているんですか?」って監督に聞いたんですよね。

平波:それで、「自分としてはそのイメージがあります」と。はじめましてではあったんですけど、全然はじめましてじゃないような質問をしてくるなと思って(笑)。

山谷:すみません!(笑)

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