『アトムの童』山﨑賢人の雄弁が山を動かす 日曜劇場の定型を打ち破る作品に

 那由他の言っていることは青臭く、言葉も不十分で、ところどころ破綻している箇所さえ見受けられたが、簡潔に言うべきことを口にしており、スティーヴ・ジョブズ的な雄弁さがあった。山﨑賢人の圧倒的な熱量は、ほぼ言葉の力だけで画面のこちらにいる私たちを揺り動かした。それは相手役の山﨑努も同じで、視力の衰えていた伊原は「君の青い思いが見えた」と言って興津たち現経営陣を支持した。はぐらかすような伊原の真意は、自らの心地良さで終わらず、より広い世界を探究する点にあったのではないか。隼人と那由他の共同作業の陰に、自らの姿勢を反省する興津の真摯さがあったことも見逃せない。

 下剋上、完全懲悪の意匠をまとっていた『アトムの童』がSAGASによる買収という最大の危機を乗り越えた後、定型的な図式を離れて最終的に人に帰着する様子は、これまでの日曜劇場にない新しい一面を示すものだった。その原動力になったのが、山﨑、松下、岸井の若い3人と新風を送り込んだオダギリにあったことに異論はないだろう。

■配信情報
日曜劇場『アトムの童』
Paraviにて配信中
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫、オダギリジョー
ナレーション:神田伯山
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
音楽:大間々昂
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/atomnoko_tbs/

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