髙橋海人は1人3役をこなしている? 『ボーイフレンド降臨!』で大げさではない絶妙な演技
ついに、アサヒ(髙橋海人)が記憶を取り戻した『ボーイフレンド降臨!』(テレビ朝日系)第8話。本来は喜ばしいことなのに、なんだか切ない。なぜなら、100年に1人の現代美術家・漆畑澄人としての生活に戻るとなれば、かしこ(桜井ユキ)や渉(田中みな実)とはまったくちがう世界の人になってしまうから。もちろん、かしこの会社で居候のように働く必要もない。それがどうにも切なくて、かしこも渉もアサヒに真実を告げられずにいたのだろう。
だが、アサヒは“正体を隠されていた”という事実だけを受け取ってしまった。自分の才能を利用するために騙されていたのだ、と。かしこが渉のように、「本当のことを言ったら、目の前からいなくなっちゃうような気がして……」と素直に言えたらよかった。でも、彼女はそこまで弱さをさらけ出せるタイプじゃない。絶望を抱くアサヒを前に、ただ泣きじゃくることしかできなかった。
たしかに、かしこも最初はカロンナ化粧品のコンペに打ち勝つために、アサヒを利用しようとした。でも、だんだんほかにも理由が芽生えてきたのは間違いない。彼に、恋をしたから。本当のことを伝えたらいなくなってしまうかもしれない……と考えると怖くなった。少しでも一緒にいたい。傷つけてしまうのは分かっていても、“今”あるこの幸せを守りたかった。ちょっぴり冷めて見えるかしこだけれど、本気でアサヒに恋をしていたのだろう。
しかし、アサヒは自分の名前を利用されることへの嫌悪感を、人一倍持っている。漆畑澄人という名前がどんどん大きくなるほどに、そのフィルターを通してでしか作品を評価されなくなったのが苦しかったから。できることが増えるほどに、背負うものも大きくなっていく。最初は、絵を描いて、みんなが喜んでくれるだけでうれしかったのに。だから、名前を出さずにゲリラアートをして、純粋に“絵”を楽しんでもらおうとした。
それなのに、大好きなかしこまで漆畑澄人を利用しようとしていたなんて……。分かった瞬間、彼はどんなに苦しかったのだろう。もちろん、勘違いではあるけれど、かしこが言わなければアサヒには伝わらない。急に、シャットダウンをしたように、かしこを睨みつける視線が怖くて苦しかった。「お前も、みんなと一緒かよ」と瞳で訴えているような気がして。