『舞いあがれ!』福原遥の豊かな表情変化が魅力的 日々のトレーニングにひた走る舞
『舞いあがれ!』(NHK総合)第23話では、人力飛行機のパイロットとして記録飛行に挑むべく、日々のトレーニングにひた走る舞(福原遥)の姿が描かれた。舞を演じる福原の豊かな表情変化がとても魅力的に映る。
現状から体重を5kg減らし、190Wで50分漕ぎ続ける体力をつけるように求められている舞は、低カロリー高タンパクな食事にこだわり、トレーニングの一環として片道20kmの通学路を自転車で走る。大学に着いてからもトレーニングは続く。「スワン号」を飛ばすため努力を続ける舞だが、努力だけではカバーしきれない正直な気持ちがその表情から滲み出る。また、お弁当の最後の一口を名残惜しそうに食べる姿には減量の苦労が、そして祥子(高畑淳子)から送られてきたジャムを思わず食べてしまう場面では、パンを頬張る舞の心の底から幸せそうな表情から、日頃の空腹感が伝わってくる。
視聴者はこれまでの回で何事も一生懸命に取り組む舞の姿を見ているから、授業中にうっかり眠ってしまう姿に舞の疲労と頑張りを感じたはずだ。バイト先でお客さんに提供したケーキを前にお腹を鳴らしてしまう場面はコミカルで、貴司(赤楚衛二)の前で久留美(山下美月)にそのことをバラされ、「それ言わんといてや」と怒る姿は愛らしい。劇中の舞の表情といえば、明るい笑顔と集中した顔つきが印象的だが、舞のおっちょこな部分が挟み込まれることで、目覚ましい努力を続けているとはいえ決して超人ではないことが伝わってきて、その存在が身近に感じられる。
第23話では、舞を応援する人たちの姿も心に残った。舞から電話を受けた祥子の嬉しそうな表情に、見ているこちらも思わずつられて笑顔になってしまう。五島列島では、さくら(長濱ねる)が念願のカフェをオープンさせていた。祥子とさくら、そして豪(哀川翔)はカフェで顔を合わせる。3人とも、舞が五島で暮らしていたときと変わらず、元気で仲が良く、その姿に安心感を覚える。そんな彼らは舞のことを気にかけていた。東大阪では、貴司の存在が舞を励ます。貴司は仕事で疲れている様子だったが、変わらず詩と向き合い続けており、八木(又吉直樹)から言われた「息がでけひんぐらいしんどい時に生まれるのが詩ぃや。もがいてたら、ええんや」という言葉を胸に「もがきながら、詩ぃ書いてみよか思てんねん」と微笑む。語り部(さだまさし)が、貴司を励ますつもりが逆に励まされた、と舞の心うちを語る。舞にとっては、「ことば」を紡ぎ出すことへの興味を失わず、努力を続ける貴司の姿もまた、舞が憧れる由良(吉谷彩子)と同じく、志を持った強い人物像に映っているのだろう。
舞のパイロットへの道のりはまだまだ続く。この先も大変なことがたくさん待ち受けると思うが、しんどくてももがきながら頑張ってほしい、と思わず応援したくなった。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK