柴田恭兵×井浦新に漂う緊張感　『両刃の斧』などWOWOWのヒリつく捜査ドラマ4選

　そんな人間くさい刑事たちが、ギリギリのところで正義を貫こうとするからこそ大人の捜査ドラマが生まれる。その筆頭が、2010年に制作された『連続ドラマW マークスの山』だ。

　1993年に刊行されベストセラーとなり、第109回直木賞を受賞した髙村薫の同名小説を映像化した本作は、マークスと名乗る謎の青年・水沢裕之（高良健吾）が次々と起こす殺人事件を描いたサスペンスだ。

　事件を追うのは合田雄一郎（上川隆也）たち刑事だが、刑事だけでなくマスコミ、事件の被害者となった暁成大学出身の関係者、水沢に寄り添う看護師・高木真知子（戸田菜穂）といった複数の登場人物が交差する群像劇となっている。

　砂漠でコンタクトレンズを探すような気が遠くなるような出来事に思えた事件の謎が、じわじわと埋まっていくのが本作の面白さだ。物語の展開方法と、刑事たちの地道な捜査がシンクロしているため、合田たちの気持ちがとても伝わってくる。

　また、劇伴はアニメの『機動戦士ガンダムUC』や『進撃の巨人』シリーズで知られる澤野弘之が担当しており、荘厳なクラシックが緊張感を高めている。

　本作はWOWOWドラマにとって、大きな転機となった作品で、後の警察ドラマの礎となった作品だと言っても過言ではない。

　同じ髙村薫の小説を原作とした『連続ドラマW レディ・ジョーカー』も2013年にドラマ化。大企業の社長の誘拐事件を題材にした社会派サスペンスだが、主人公の合田雄一郎を上川隆也が、合田の親友の検事・加納祐介役を石黒賢が、引き続き演じているため『マークスの山』の続編としても楽しめる。

　最後に紹介したいのが『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』だ。伊兼源太郎の同名小説を2021年にドラマ化した本作は、警察の不正を暴くため、「警察の中の警察」と呼ばれ、仲間から忌み嫌われている“ジンイチ”こと警視庁人事一課監察係官の佐良正輝（松岡昌宏）が主人公の捜査ドラマだ。

　佐良の仕事の多くは、張り込みや尾行なので、映像も一人称の視点を意識しており、どのカットも常に誰かが遠くから覗き見ているかのようだ。少しだけ揺れているカメラワークが独特で、常に「誰かが誰かを見張っている」という他者の視線を強く意識させる尖った映像となっている。

　ジンイチの佐良は警察内で嫌われており、仲間とのやりとりは常にギスギスしている。佐良は、仲間と共に犯罪に立ち向かう刑事たちの強い絆が描かれてきたWOWOWドラマの中ではイレギュラーな存在と言える孤独な刑事だが、孤独を引き受けているからこそカッコよく映る。

　警察内の裏切り者の正体を追って、二転三転していくストーリーも面白いが、何より孤独感に酔えるのが、本作の魅力だ。夜中に一人、ハードボイルドな気分に浸りたい時におすすめしたい作品である。

■WOWOWオンデマンドについて
スマホやPCでも見られるWOWOWオンデマンドはBS視聴環境が整っていなくてもネット環境があれば視聴可能。
さらに、無料トライアルも実施中。
申し込み月内は料金なしで体験可能。

■配信情報
オリジナル捜査ドラマ特集、WOWOWオンデマンドで期間限定公開中！
特集ページ：https://wod.wowow.co.jp/browse/editorial/18596

『連続ドラマW マークスの山』
配信ページ：https://wod.wowow.co.jp/program/M00932

『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』
配信ページ：https://wod.wowow.co.jp/program/116634

『連続ドラマW 雨に消えた向日葵』
配信ページ：https://wod.wowow.co.jp/program/171344

『連続ドラマW 両刃の斧』
配信ページ：https://wod.wowow.co.jp/program/171161