『サイバーパンク:エッジランナーズ』が切り開いた新たなアニメ表現

 Netflix『サイバーパンク:エッジランナーズ』が世界的な人気を博している。配信後は、原作ゲームである『サイバーパンク2077』の同時接続数が爆発的に増えているほか、Netflixでの視聴ランキングでも、全世界のTV番組でもTOP10にランクインしている。海外のゲーム作品を原作としたNetflix配信の世界市場の強さを証明した形だ。今回は本作の魅力とアニメーション制作を手掛けたTRIGGERの表現の特性について考えていきたい。

『サイバーパンク: エッジランナーズ』予告編 (トリガー編集版) - Netflix

 日本アニメで近年多く見受けられる傾向として、京都アニメーションや新海誠作品が顕著だが、まるで写真と見間違えるような現実に即した背景などを元にした、リアル志向のアニメーション表現がある。特に京都アニメーションは人間の身体的な癖を徹底的にリアルに描き、この路線で1つの頂点とも呼べる表現を披露した。

 しかし、アニメの魅力はもっと広大だ。そして本作を制作したアニメスタジオTRIGGER、そして今石洋之監督は写実とは異なる、アニメならではの表現を模索してきた作家の一人である。今石監督が手掛けた『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』では、アメリカのカートゥーンアニメーションのように、記号的な2~3頭身のキャラクターが動き回る映像表現が観客を魅了した。

 今石監督は熱心な金田伊功フォロワーとしても知られている。金田は遠近感などを表すための絵画技法であるバースが独特で、迫力のあるアクション表現を行なってきたアニメーターの一人だ。金田が手掛けたきた作品に連なるように、今石監督も『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』などで、脚本の中島かずきの熱血な物語と共に、歌舞伎的に見栄を切りながら迫力のある映像を作り上げてきた。

 それが結実したのが『プロメア』だろう。幾何学的な記号がエフェクトとして使用されており、背景も含めて写実的な要素は少ない。しかしだからこそアニメや漫画などの絵が持つ、迫力のある表現が目立っている。

 そんな今石監督&TRIGGERは『サイバーパンク:エッジランナーズ』をどう表現したのか。

 YouTubeにて配信されたスペシャルトークショーや、各種インタビュー(※)にて言及されているように、TRIGGERと『サイバーパンク2077』を手掛けたポーランドのゲーム制作会社CD Projekt REDは、目指す表現の方向性は異なっている。ゲームである『サイバーパンク2077』は、プレイ動画などを見ても『ブレードランナー』のようなサイバーパンクの世界を背景に、人物もガジェットも比較的写実的なSFを志向していることが伝わってくる。例えるならば、CGをたくさん用いたハリウッド洋画のような映像だ。

 一方でTRIGGERの方向性は絵画的表現ならではのダイナミックな映像である。この方向性のすり合わせに当初から難航したと、TRIGEERの大塚雅彦社長も明かしている。しかしその方向性の違いにより計算が立たないからこそ、新たな化学反応を起こす未知なる可能性があったともいえる。

 その化学反応の最大の結果としてわかりやすいのが、レベッカの存在だろう。見た目的にはまるで10代前半の幼女にも見えながらも、このサイバーパンクな世界に溶け込むように、体は改造されている様子が窺える。同時にこの世界の住人らしく、アウトローとして残虐な一面も持ち合わせているという、ギャップのあるキャラクターだ。

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