『六本木クラス』竹内涼真、平手友梨奈らの熱演で大成功 テーマを色濃く表した台詞の数々

「私はあのとき恥ずべき捜査をしてしまいました。娘に見せる情けない背中は1回で十分です。私はこれから子供のために胸を張って生きたいんです」
松下博嗣(緒形直人)

 元刑事で現在は農家を営む松下が、茂から持ちかけられた独占契約を断ったときに語ったもの(第7話)。得のためなら嘘や不正がまかり通る社会を子供たちに残してはいけないと感じていたのだろう。

「法律っていうのは貧乏人を支配するためにあって、俺みたいな上級国民には適用されない」
長屋龍河(早乙女太一)

 葵の策略にはまって、得意げにひき逃げの真実を語る龍河(第7話)。脚本は「上級国民」という日本のバズワードを放り込んできた。『六本木クラス』は何をしても罪を問われなかった龍河のような「上級国民」に対する、新をはじめとする庶民のレジスタンスの物語だったと読むこともできる。

「誰でも過ちは犯す。だけど、勇気がある人にしか責任は取れないのよ。パパ、カッコいいでしょ?」
相川京子(稲盛いずみ)

 長屋の専務・相川が、過ちを認めて警察に出頭しようとする松下のひとり娘・未玖(吉澤梨里花)に語った言葉(第8話)。まっとうなことを言っているが、松下が出頭することで最も利益を得るのは自分なわけだから、やっぱりしたたかな女性である。ただ、最終回までに松下のことが本当にカッコよく見えてきてしまった模様。

「りくはりくだから、他人を納得させる必要なんてない。大丈夫。大丈夫だ」
宮部新

 トランスジェンダーであることを勝手に公表された綾瀬りく(さとうほなみ)に対して新がかけた言葉(第10話)。りくの生き方、気持ちを尊重しつつ、テレビ出演を辞退することに関しても「世間の目に耐えなきゃいけないほど大事なことでもない」と認めていた。誰もが自分らしく、自分の人生を生きることを大切にしていた新らしい言葉だ。

「私は石ころ。炎で焼いてみよ。私はびくともしない石ころ。激しく叩いてみよ。私は強くて硬い石ころ。深い暗闇に閉じ込めてみよ。私は独り輝く石ころ」
麻宮葵

 葵がりくに電話口で読み聞かせた詩の一節(第10話)。この詩はこう続く。「やがて砕け散り、灰になって消えていく。そんな自然の摂理さえ跳ね返す石ころ」「生き残った私は――私はダイヤだ」。自分は自分であり、自分らしく生きていくことの過酷さ、大切さ、素晴らしさを高らかに歌ったものだ。

 「私はダイヤだ」と題されたこの詩は『梨泰院クラス』でも象徴的な場面で使用されていた(詩を書いたのは原作者のチョ・グァンジン)。この詩をもとに挿入歌ハ・ヒョヌ「石ころ」がつくられ、各話のエンディングほか、この詩が読まれるシーンでも流されている。

「これが人生で初めて自分が希望して選んだ道です」
楠木優香

 茂に長屋を退職することを伝えたときの言葉(第12話)。茂は優香のことを「飼い犬」と表現したが、それ以上に愛情を注いでいた。彼にとって優香は実の娘のような存在だったのかもしれない。一方、茂から奨学金などの支援を受けていた優香は、いつも新との板挟みに苦しんでいた。

 優香は新の「あの会社から絶対自由にしてやる!」という言葉に頼りきってしまっていたようにも見える。新の葵への愛を知ったことで、ようやく呪縛を断ち切って自分の道を歩みはじめた。

「生きるのはすごくつらいけど、私は代表と出会って、この言葉が胸に響くんです。“何度でもいい、残酷な人生よ、もう一度”」
麻宮葵

 銃撃されて昏睡状態だった新が、夢の中で思い出した葵の言葉(第12話)。葵は頑張って生きることに意味を見出していなかったし、生まれてこなければよかったとさえ思っていた。今の世界は自由奔放な彼女にとって生きづらかったのも確かだ。しかし、新と仲間たちと出会い、二代目みやべのビジネスに参加することによって、生きることに意味を見出した。この言葉の元は、葵が手にしていたニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』(タイトルは『ツァラトゥストラ語り』になっていた)。

「この先、つらい夜が続くとしても、俺には俺を必要としてくれる仲間がいて、みんなと過ごす毎日が楽しくてしょうがないから、だから……だからもう、父さんには会えないけど、この気持ちを全部胸にしまって、俺は生きていくよ」
宮部新

 昏睡状態の新が夢の中で父・信二と出会って語ったもの(第12話)。信二はつらいことのない世界へ新を誘うが、新は断って生きていくことを誓う。新を支えたのは、茂への「復讐」ではなく「仲間」とのつらくても楽しい毎日だった。

「それが人生ってやつだ。生きてさえいれば、全部、なんてことない! ホントだぞ」
宮部信二

 新の言葉を受けて、信二は満面の笑顔でこう答えた(第12話)。「復讐」をテーマにしても復讐にとらわれ続けることなく、「仲間」の大切さを謳いながら全員が一緒じゃなくてもいい。自分の人生を主体的に、一生懸命に、生きることそのものを謳い上げたい。それが『六本木クラス』が伝えようとしたテーマだったように思う。

「で、どうだったんだ? 酒の味は」
宮部信二

 大団円を迎えた最終回。新が日本酒を呷ると、信二が現れてこう問いかけた。酒の味とは、人生の味だ。つらければ、辛いし、苦い。だけど、心が高揚すれば、甘くなる。信二の問いかけに、新は微笑んで返した。きっと今は甘かったのだろう。この後、酒がどんな味に変化するかはわからない。急激に辛くなることもあるはずだ。それでも、自分の思ったように生きていく。だってそれが人生なのだから。

■配信情報
『六本木クラス』
TELASA、TVerにて配信中
出演:竹内涼真、新木優子、平手友梨奈、早乙女太一、鈴鹿央士、香川照之、稲森いずみ、緒形直人、光石研、中尾明慶、矢本悠馬、さとうほなみ、近藤公園、田中道子
原作:チョ・グァンジン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』(ウェブ漫画/電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」掲載中)、チョ・グァンジン/キム・ソンユン『梨泰院クラス』(テレビシリーズ/JTBC)
脚本:徳尾浩司
演出:田村直己、樹下直美ほか
音楽:高見優
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/roppongi_class/
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