宮沢氷魚、『ちむどんどん』和彦役で開いた新たな扉 その先にある未来に期待
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』も最終週。これまで沖縄から東京へと移ってきたヒロイン・暢子(黒島結菜)の物語が、再び沖縄の土地で帰結しようとしている。幾度も荒波を越えようと、果敢に船を漕いで冒険をしてきた彼女の旅には欠かせない存在がいた。宮沢氷魚演じる青柳和彦である。
思い返せば、暢子たちの物語は東京からやってきた転校生・和彦(田中奏生)との出会いから始まった。彼は最初、暢子の兄・賢秀(竜星涼)から「やまんとちゅ」と呼ばれてからかわれたり、自分も東京にあるものがないとからかったりとあまり沖縄に馴染んでいなかった。いろいろなものを口にする暢子にも若干ひいていて、比嘉兄妹とは最初の頃こそ距離があり、どこか冷めているような印象だった。それもそうで、東京では両親が不仲だったため家庭的なものに対して良いイメージを持っていなかったからだ。しかし、暢子たちとの交流を経て、自分が一歩踏み出せば新たな関係性を築くことができることを実感した。
その後、暢子と和彦は1973年の東京で再会する。暢子が「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)に社会勉強の一環で派遣された東洋新聞社の学芸部で、和彦は記者として働いていたのだ。しかし、彼の横には同僚であり恋人でもある愛(飯豊まりえ)がいた。このとき、暢子との再会を素直に喜ぶも、和彦は彼女を妹のような、どこか放っておけない存在として接していた。しかし、そこに恋愛感情があることを、あろうことか愛と婚約してから気づいた和彦。この頃から、なんとなくしっかり者で常識人だった和彦のイメージが崩れ始め、曖昧で相手任せな“ダメンズ”っぽさが前面的に出てしまった。
もともと、演じる宮沢は自身の精悍な顔つきと落ち着いた雰囲気が生かされるような“静かな男”を演じるイメージが強い。それは初の主演映画にして演技力が高く評価された『his』での好演によるものだが、『ちむどんどん』の和彦役はそういった宮沢の演じそうなキャラクターでありながらも、実は“変化球”的な役柄だったと言える。