『魔法のリノベ』リノベーションが起こした奇跡 大量に散りばめられた数々の伏線回収も
「僕らなら、リノベできます」。玄之介(間宮祥太朗)がかけた言葉は、小梅(波瑠)の心に強く響いたことだろう。『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)がついに最終話を迎えた。まるふく工務店を去った小梅のその後、そして梅玄コンビがこれまで向き合ってきたものの集大成が描かれる。
小梅が玄之介たちの元を離れたのは、有川(原田泰造)から、まるふくを守るためだった。しかし、まるふくの面々は小梅を取り戻そうと策を練る。蔵之介(遠藤憲一)の過去の失態を、自らホームページに公開して、小梅がグローバルステラ Dホームに残る意味をなくそうとしたのだ。さらに玄之介は小梅に会いに行き、直接戻ってきてほしいと説得。後日、小梅はまるふくに戻り、これまで通り玄之介とバディを組んで一休食堂の案件に戻った。一方で、有川率いる円卓の騎士団は、久保寺(金子大地)の発言を皮切りに決壊する。すべてを失った有川だが、最後には蔵之介に寄り添ってもらうことで再び人生をやり直そうとするのだった。
大団円を迎えた『魔法のリノベ』は、まさにリノベーションが起こす奇跡を描く。小梅と玄之介が担当してきた家族は、家をリノベーションするだけでなく人生も再生してきた。そして2人がバディを組み、一組一組の家族と向き合うことは、それぞれの人生と向き合うことにも通じる。玄之介は実際に、腹を割ること、怒ってもいいこと、時には思い切ってもいいことなど様々なことを学ぶことができた。それと同時に、離婚の原因になった弟・寅之介(落合モトキ)と向き合い、小梅との新たな関係とも向き合って、まさに人生をリノベしてきたのだ。他のキャラクターも同様に、自身が抱える問題を乗り越えたり、新たな価値観を見つけたり、前を向いてまた歩き出す。最終話で描かれた一休食堂のリノベーションでは、“ひとやすみ”という想いを掲げた食堂が再生し、地域住民の憩いの場になる様子が印象的だ。まるで、まるふくが多くの人にとってそうであったように。
加えて大量に散りばめられた伏線が綺麗に回収されたことも最終話の見どころだっただろう。キャスト陣の芝居が卓越していたために、どうしても細部を見逃してしまいがちだが、実は本作はプロットの伏線、小道具や装飾での伏線、エンディングの伏線など、芝居以外の部分もかなり綿密に作られている。「まるふクエスト」が夢の中の話から現実の小梅たちにとって共通の話題になっていくことや、進之介(岩川晴)の作った折り紙の剣、小梅の指輪など、細部にわたるエピソードが見事につながっていく。極め付けは、ヨルシカの歌う主題歌「チノカテ」のオマージュ元となった文学作品『地の糧』の文庫本がエンディングに登場していること。これはヨルシカが本作のために楽曲を書き下ろしたことへのリスペクトを込めて、元となる作品をさりげなく映像に映したのだと推察すると、スタッフ陣の愛の深さに胸が熱くなる。全スタッフの暖かい愛が、まるふく工務店の暖かい愛と重なり、優しい作品だったという余韻を感じさせてくれる。
私たちもつまずいた時は、自分の人生をリノベすればいい。いいところをだけ残して、やり直したらいい。そう前を向かせてくれる作品だった。夕陽がきれいだと思えるような日常を歩みたいと、背中を押された気持ちだ。
■配信情報
『魔法のリノベ』
FOD、TVerにて配信中
出演:波瑠、間宮祥太朗、金子大地、吉野北人(THE RAMPAGE)、SUMIRE、本多力、山下航平、YOU、近藤芳正、原田泰造、遠藤憲一
原作:星崎真紀 『魔法のリノベ』(双葉社 JOUR COMICS)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
主題歌:ヨルシカ「チノカテ」(ユニバーサルJ)
音楽:瀬川英史
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、伊藤茜(メディアプルポ)、田端綾子(メディアプルポ)
監督:瑠東東一郎、本田隆一
制作協力:メディアプルポ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mahorino/
公式Twitter:@mahorino8
公式Instagram:@mahorino88