『ちむどんどん』賢秀の言葉足らずなバックハグ! 清恵に伝えた「好きだから」

 『ちむどんどん』(NHK総合)第113話、清恵(佐津川愛美)を偶然にも見つけることができた賢秀(竜星涼)は、清恵を後ろから抱き締めた。しかし抱き締めるだけでは想いは伝わらない。賢秀は困惑する清恵を見て「クソ、だまされた!」と悔しがる。第112話で三郎(片岡鶴太郎)は確かに「黙って後ろからガバッと抱き締めろ」と言っているが、それは清恵に「悪かった。あれはウソだった」とうまく言えなかった場合の話だ。三郎の助言を早合点してしまうのはいかにも賢秀らしい。

 養豚の仕事に誇りと情熱を持ち、真面目にコツコツ働く清恵の姿は賢秀の心を動かした。賢秀は清恵を説得する中で、これまで語ってこなかった心の内を打ち明ける。幼い頃、暢子(稲垣来泉)が自分から東京へ行きたいと言ったとき、本当は暢子も行きたくないと分かっていたのに内心ホッとしたこと。けれど賢秀は暢子を引き留め、「これからは、何があっても大切な人を見放すことは絶対にしない!」と心に誓った。そして今、賢秀にとって清恵は「大切な人」なのだ。「何で私?」「何で?」と問いかける清恵に、ようやく賢秀は言葉にして想いを伝えることができた。

「好きだから」
「大好きで、ずっと一緒にいたいから」

 清恵もまた、賢秀のまっすぐな言葉に心動かされたようだったが、過去の出来事への罪悪感からか、想いをなかなか受け入れることができない。清恵が「私はウソつきで最低なんだよ!」と大声をあげる姿は、賢秀の素直な言葉を嬉しく思いながらも、受け入れまいと必死なように見える。清恵を演じている佐津川が見せる拒絶からは、清恵が賢秀を受けつけずに拒んでいるのではなく、賢秀を大切に思うからこそ拒んでいる彼女の想いが伝わってきてとても切ない。

 スナックのママ(桑原裕子)と客(細井学)に呼ばれた清恵は、「グッド・バイ・マイ・ラブ」を歌いに店へ戻る、すなわち東京に残る道を選んだかのように思われた。しかし彼女は寛大(中原丈雄)と賢秀がいる養豚場に帰ってきた。賢秀の目を見つめて言った「歌わなかった」の一言には、それ以上言葉にせずとも伝わる清恵の想いが感じられた。

 賢秀と清恵は「ただいま」「おかえり」と言い合い、お互いを力強く抱き締める。物語冒頭の言葉足らずなバックハグとは対照的なシーンとなり、2人がようやく自分の気持ちに正直になれたのだと感じられる演出だった。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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