『競争の番人』“最強のチーム”となったダイロク ついに藤堂と小勝負の直接対決が決着

 小勝負(坂口健太郎)の因縁の相手である藤堂(小日向文世)が取り仕切る再開発プロジェクトの官製談合が行われると思しき現場に踏み込んだ前回のクライマックス。しかし“ダイロク”メンバーたちが目撃したのは、別の談合の現場だった。そして藤堂は公取を訪れ、小勝負にある忠告をする。9月12日放送の『競争の番人』(フジテレビ系)第10話は、弱小官庁たる公正取引委員会が、強大な権力者の不正を暴く。つまりこのドラマが説き続けてきた“弱くても戦える”ということをまざまざと証明してみせた。

 ラクター建設の檜山が逮捕されたことによって、その談合の裏付け調査のためにラクター建設に立入検査を行なうことができた“ダイロク”。留置した資料から、刻一刻と入札の日が迫る再開発プロジェクトの談合場所を探るが、なんの手掛かりも得られずにいた。そんななか楓(杏)が小津建設を訪れると、談合に関わっていたことが知られたために取引先からのキャンセルや嫌がらせを受け窮地に追い込まれた小津夫妻の姿が。一方、藤堂の周辺を探っていた六角(加藤清史郎)は、藤堂が建設業界の談合を合法化する法案を提出しようとしていることを突き止めるのだ。

 小勝負の15年分の執念が報われる瞬間へ向かって、一気に畳みかけるように物事が進んだ今回のエピソードは、ほとんどこのドラマの最終回といっても過言ではない密度となった(実際のところはもう1エピソード残されているが)。そのなかで明らかになったのは、藤堂という強敵の過去。阪神大震災で妻を亡くし、暮らしていたマンションが行き過ぎた“競争”によって安く請け負った業者が作った欠陥マンションであったことから、彼は競争を恨むようになり、やがて談合を推進するようになったというバックグラウンドである。

 「談合は国民の命を守るためにある」と語る藤堂と、「その談合のせいで命の危機にさらされている人もいる」と対抗する小勝負の直接対決。その時点ですでに他のメンバーが談合の現場を押さえており、小勝負は藤堂に談合に参加していたことを証明する言葉を引き出す作戦に打って出る。ドラマ的に正攻法なこのクライマックスは、検察も動かして狭い廊下で藤堂を追い詰めた末に小勝負が語る、「競争のない社会は上から腐る」という一連の力説によって完成する。藤堂にとって敗因となった一枚の領収書に込められた下請け会社の無念。それはすなわち、このドラマで描かれてきたいくつもの案件がひとつひとつのピースになって、このクライマックスに向かっていたことを示すものだ。

 巨悪を暴いたといえども、公取は変わらず弱小官庁でありつづけ、藤堂が捕まっても談合はなくならない。そしていつまでも公取には戦い続けることしかできないというのは、“ほぼ最終回”のようなエピソードとして非常に綺麗な帰結点である。初めはまったくの門外であった楓が公取の仕事にやりがいを見出す点も収まりがいい。そして大仕事を成し遂げたとはいえ、お咎めを受けて左遷される小勝負の姿は、どうしたって『HERO』(フジテレビ系)の久利生公平(木村拓哉)と重なる。次週の本当の最終回では、本庄(寺島しのぶ)の目論見通り“最強のチーム”となったダイロクにとっての延長戦といったところだろうか。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、小日向文世ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
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