『ちむどんどん』暢子に観てほしい映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』

 そう、暢子はこれまでも無教養さ、世間知らずさ、非常識さという点で問題を抱えてきたキャラクターだ。それを改善するために「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)が新聞社へバイトに行かせたはずなのに、そこでの学びがその後のキャラクター成長に生かされていない点は非常に残念である。暢子が今やるべきことは、自分側の食に始まる文化や考えを相手に押し付けるのではなく、相手……つまり重子の文化を知り、学ぶことではないだろうか。

 「住む世界が違う」という言葉をあらためて考えると、自分と全く同じ生まれ・育ちの人はかなり限られているし、厳密に言えば“全く同じ”なんてあり得ない。自分と相手の育ってきた環境や価値観の違いは、育ててくれた親と相手の親の違いでもある。そして、「その親同士が似ている」と言ったって、親を育ててくれた親、つまり自分からすると祖父母は、また相手の祖父母と全く違う環境でそれぞれ育ってきているに違いない。辿れば辿っていくほど、私たちは他者と“同じ”ではないことがわかる。しかし、だからこそ違う相手同士、相手の文化を自ら知っていく姿勢、尊重する心を持ち続ける必要があるのではないだろうか。その相互のやり取りが、「結婚」から始まった二人の全く違う人間が「家族」になるために必要な過程だと思うのだ。

■作品情報
『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』
監督:ジョエル・ズウィック
脚本:ニア・ヴァルダロス
製作:ゲイリー・ゴーツマン、トム・ハンクス、リタ・ウィルソン
出演:ニア・ヴァルダロス、ジョン・コーベット、レイニー・カザンほか
写真:Album/アフロ

関連記事