『初恋の悪魔』で繰り広げられた“推理”ではない“考察” 背後には“恋”が大きく絡んでいる?

 また、馬淵たち4人は、刑事ドラマを観ている我々「視聴者の分身」だとも言える。
興味深いのは、自宅捜査会議をおこなう際に、鹿浜が「推理」ではなく「考察」と言うこと。「加害者を裁かないこと。被害者に同情しないこと」というルールを決めたあと、4人の“考察”が始まるのだが、その姿はTwitterやYouTubeで視聴者が熱狂するテレビドラマの“考察”を、ドラマ内の登場人物がおこなっているかのようである。

 花火を見ようとしたことによる「転落死」という凡庸な考察を言う馬淵に対し、若者を置き去りにしたこの国の腐敗や組織ぐるみの隠蔽に繋げようとする小鳥は、鹿浜から「社会派君」と呆れられ、すぐに、シリアルキラーによる猟奇殺人に繋げようとする鹿浜は犯人になった方が生き生きとする「キラー属性」の持ち主と言って馬鹿にされる。

 小鳥と鹿浜の意見は極端だが、事件が起きた原因を「社会」に求めるのか、「個人の病理」に求めるのか、という考察のパターンを、二極化したものだと言える。

 最終的に3人の話を聴いた星砂が、少年の転落は恋する少女が手術で命を落としたことを悲しんでの「自殺」だったと考察。そこから、手術を担当した医師が、少女の手術を中断して、クイズ番組の大物司会者の手術を優先していたことを突き止める。事件の根幹にあったのは恋心で、だから「初恋の悪魔」というタイトルだったのかと納得した。恋愛ドラマを書き続けてきた坂元裕二らしい落としどころである。

 恋にまつわる要素は、4人の中にも見え隠れし、小鳥が服部を陰ながら支援する姿や、異常犯罪者にしか興味がなかった鹿浜が、星砂に興味を示す姿が劇中では描かれた。自分の兄を殺害したのではないかと疑われる馬淵が、署長の雪松鳴人(伊藤英明)に脅される場面の背後にも「恋」が大きく絡んでいるのかもしれない。そして、エンドロールで星砂が「『蛇女』という別の人格を宿しているのではないか?」と匂わせ、次回へと続く。刑事ドラマだけでなく考察要素も二層構造となっている巧みな脚本である。

■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hatsukoinoakuma/
公式Twitter:@hatsukoinoakuma
公式Instagram:@hatsukoinoakuma_ntv

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