『ちむどんどん』いつ観てる? 朝ドラが国民的コンテンツとして復活した背景

 現在はNetflixのドラマのような一挙配信も登場しており、ドラマの放送形式は多種多様なものになりつつある。しかし2010年はまだ、1週間に1話1時間の物語を1クール(3カ月)にわたって放送するという形式が連続ドラマの主流だった。テレビ全体の影響力は陰りが見え始めていたが、それでも夜のプライムタイム(19時~23時)に放送される作品が話題の中心だった。

 対して、毎日15分ずつ放送していくという朝ドラのスタイルは、男は会社で働き、女は専業主婦として家事をおこなうという昭和の家族の生活様式に根ざした放送形態だった。そのため、視聴者のライフスタイルが多様化していく1980年代後半のトレンディドラマの時代になると、朝ドラは物語も放送形式も時代とズレたものとなっていた。しかし、Twitterが登場しSNS消費が広がったことで、古さは新しさに変わり、現代的なドラマ枠として復活した。

 これは内容面にも言えることだ。朝ドラは、1話の尺は15分と短いものの全体の物語は2クールと長い。この長尺を活かして各エピソードが有機的につながる複雑で見応えのあるストーリーを模索する流れが本格化したのも、2010年代からだ。

 朝の忙しい時間に放送されている朝ドラは、ナレーションを多用することでメイン視聴者である主婦が洗い物をしながら背中越しに音声を聞いているだけでも内容を理解できるドラマとして作られていた。例外的に藤本有紀脚本の『ちりとてちん』のような、細部まで作り込まれた朝ドラも存在したが、話が複雑で1話見逃すだけで話が理解できなくなるため、脱落者も多く、一部で熱狂的な支持を受けながらも、リアルタイムでの視聴率に結びつく結果を出せずに苦戦していた。

 しかし、ハードディスクレコーダーが普及したことで全話の録画が容易となり、「NHKオンデマンド」や「NHKプラス」といった配信サービスが充実したことによって、後から放送を見返して細部を確認することが簡単になった。仮に自分自身では気づけなかったとしても、Twitterの感想やYouTubeにある考察動画を見れば、誰でも伏線や元ネタを理解できる。

 同じ藤本有紀作品でも、一部視聴者の熱狂的支持に留まった『ちりとてちん』と、リアルタイムで多くの視聴者に支持され、大きな盛り上がりを見せた『カムカムエヴリバディ』の違いは、SNSを軸にした情報環境の変化が大きいだろう。

 敷居が低く、一話一話を「点」として観ても、連続ドラマという「線」で観ても楽しめる。だからこそ、朝ドラは国民的コンテンツとして復活したのである。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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