『ベイビー・ブローカー』インタビュー

カン・ドンウォン「“映画”を作っている感覚があった」 念願の是枝裕和作品出演を振り返る

 『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、韓国のキャスト・スタッフと“赤ちゃんポスト”を題材に作り上げた韓国映画『ベイビー・ブローカー』。ソン・ガンホ演じる主人公サンヒョンと共に、裏家業として“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を連れ去る児童養護施設出身のドンスをカン・ドンウォンが演じている。過去に来日した際には、是枝監督の作品に出演したいと公言していた彼に、念願の是枝作品出演への思いや俳優という仕事について話を聞いた。

「韓国には今までこういう映画がなかった」

ーー韓国でもすでに公開を迎えていますが、周りの反応はいかがですか?

カン・ドンウォン:個人的な話で言うと、映画仲間からの「すごく淡々とした、力を抜いた演技がすごくよかった」という声がうれしかったです。観客の方からの声としては、 僕が演じたドンスが心を締め付けられるキャラクターだと言っていただいたことがうれしかったですね。あと、韓国にはこういう温かい映画があまりなかったので、それがよかったという声もありました。

ーー確かに、これまであなたが出演してきた作品はアクションものが多い印象です。

カン・ドンウォン:そうですね。韓国はもともとアクション映画が多いんですよ(笑)。ただ、僕はいい映画であればどんなジャンルであれ関係ないので、この映画にはぜひ出演したいと思っていました。

ーー5年前、『MASTER/マスター』の公開タイミングで来日された際に、「是枝監督の作品に出たい」という旨の発言をされていましが、当時からすでに『ベイビー・ブローカー』の話は動いていたんですか?

カン・ドンウォン:うーん……たぶんあったと思います(笑)。この話が出たのが、6~7年前だったので。最初に是枝監督と会ったのは偶然だったんですが、その後『ベイビー・ブローカー』のプロットいただいて、ぜひやってみたいと思ったので、釜山映画祭で再会したときに正式にお話をさせていただきました。

ーーストーリー的にはどのような点に惹かれて出演を決められたのでしょうか。

カン・ドンウォン:子どもを売る人たちと子どもを捨てた女性が一緒に旅をしながら、徐々に家族のようになっていく設定そのものがすごくスペシャルだと思いました。韓国には今までこういう映画がなかったですし、韓国の観客のみならず、世界の方々にこの映画が持っているメッセージを伝えたいと思いました。

ーーまさに是枝監督が描き続けてきたテーマでもあると思います。

カン・ドンウォン:そうですね。是枝監督の作品は本当に温かいのですが、その温かさの中に、特有の批判的な視点や洞察力があって、僕はそういうところに惹かれました。

ーー是枝監督のこれまでの作品の中で、一番好きな映画はどの作品ですか?

カン・ドンウォン:是枝監督の作品で一番好きなのは『奇跡』です。あの作品はむしろ社会に対する批判的な視点というよりも温かいものがメインになっていますが、そこがすごく好きな部分なんです。子どもたちの演技が本当にキラキラしていました。

ーー実際に現場で見て、子役に対する是枝監督の演出はいかがでしたか? 『ベイビー・ブローカー』でも、ヘジンが加わってから一気に空気が変わったような印象を受けたのですが。

カン・ドンウォン:子役に台本を見せないところが本当に独特だと思うんですが、僕はそれがとても効率的だと思いました。子役の子たちは特に、事前に練習をやりすぎてしまって、現場に来ると演技が硬くなってしまうことがよくあるんです。もともと僕はそれをちょっと残念に思っているところがあったので、是枝監督の子役への演出はとてもいい方法だなと思いました。なので今回僕が努力したのは、ヘジンを演じたイム・スンスをリラックスさせてあげるために、楽しく遊ぶように演技をすることでした。ただ、本人がリラックスしすぎてちょっと大変だったんですが(笑)、すごくいい経験でしたね。

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