幸せは近くにある 『私たちのブルース』キム・ウビン、イ・ビョンホンらが伝えてきたこと

 人生は思い通りにはいかない。悲しいことや不幸が突然やってきて、時に不公平だと恨むこともある。生と死もいつだって隣り合わせだ。『私たちのブルース』(Netflixで配信中)は、幸せは案外近くにあるものだと教えてくれた。つい遠くを見つめてしまう私たちの隣を優しく照らしてくれるかのように。

 いつもは強気なイ・ヨンオク(ハン・ジミン)も恋人の両親への挨拶はいつになく緊張し、「やっぱり行かない」と言う始末。愛する人の両親に受け入れてもらえないかもしれない怖さを感じていた。ヨンオクがネガティブな時こそ、パク・ジョンジュン(キム・ウビン)の愛の深さが際立つ。2人なら乗り越えられると見守りたくなるカップルだ。ジョンジュンの母親の一言目は、「大変だったでしょう」とヨンオクを労る言葉だった。笑顔で歓迎されるよりもずっと、忘れられない日となっただろう。

 末期がんで余命僅かな母親のカン・オクドン(キム・へジャ)を木浦に連れて行くことになった息子のイ・ドンソク(イ・ビョンホン)。「やりたいことは何でも聞く」と言ったのはオクドンの願いを叶えるだけでなく、自分の気持ちを全てぶつけるためでもあった。

 継父の法事に向かい、義理の兄であるジョンウ(チェ・ビョンモ)と顔を合わせたドンソクは予想どおり言い合いとなる。予想していなかったのは、オクドンがドンソクを庇い取り乱したこと。父親が亡くなったのをドンソクのせいにして泥棒野郎とまで罵るジョンウに、「なぜこの子を悪く言うの」と声を荒げて言い返す。弱った体のどこに力があるのかと驚くばかりの迫力で。

 初めて味方してくれた母親の姿を見て、ドンソクのわだかまりが解けるかと思えば、謝ろうとしないオクドンに失望を繰り返す。だが貯水池となってしまったオクドンの故郷に訪れたのを契機に、オクドンの過去と本音を知る。6歳の頃に両親を亡くし、お金を稼ぐために学校にいけなかったオクドン。生まれ変わったらお金持ちの家に生まれて勉強をしたいという願望は、裏を返せば、自分の子には仕事をさせずに学校に行かせるのが最善だと思っていたということ。その選択が間違っていたと気づいても、やり直す方法も謝り方も知らずに生きてきてしまったのだ。過酷な人生を歩んできたオクドンは、どうやって幸せになればいいのか、何が幸せなのかも分からない。 

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