『ちむどんどん』で相次ぐ“父の死” あっさりと描かれる中で物語にどう機能していく?
大概、早い段階で父親が死ぬ場合、その死が主人公にとって大きな変化のきっかけ、ないしは志に関わってくるという意味を持つ。『とと姉ちゃん』がその良い例だろう。『ちむどんどん』に関しては、賢三が死んだことは比嘉家の困窮ぶりが切迫するという設定的な文脈で利用されていて、いまだにヒロイン及び残りの兄妹にとってあまり大きな影響を与えていないのが特徴的だ。しかし、東京編が始まってから再び賢三の存在感が強まるという展開に。暢子が住むことになった鶴見に、若い頃の賢三も実は住んでいて同じように街の人にお世話になっていたことや、暢子が使う包丁に刻まれた賢三の名を見て「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)が何かしらの因縁があることを仄めかすなど、やはりここに来ても物語上の設定的な文脈で賢三の死は意味と影響を発揮し始めているのだ。
暢子にとって史彦は「レストランに連れて行ってくれたことがある、和彦くんのお父さん」くらいの印象しかないかもしれない。しかし、「どうか、人生を恐れないでください。人生は幸せになろうとする道のりです。明日は、今日よりも幸せになる。その信念を思い出が支えてくれる」と、暢子の教室にやってきて教えを説いた史彦の言葉は、幼かった彼女の心を揺さぶったものだったと、忘れないでおきたい。そして賢三と同じように今後、物語でどのように史彦の死が意味を持ってくるのか注目したい。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK