三谷幸喜×WOWOWならではの試みも 瀧本智行、廣木隆一ら映画監督の名作ドラマ6選

瀧本智行が16mmフィルムカメラで撮影した『連続ドラマW 私という運命について』

『連続ドラマW 私という運命について』

 限定された場所と時間の中で起こる出来事を面白く描く三谷幸喜に対して、瀧本智行の監督した『連続ドラマW 私という運命について』と『連続ドラマW 北斗 -ある殺人者の回心-』(以下、『北斗』)は長い年月の積み重ねによって変化していく人間の姿をクールなタッチで紡ぎ出している。

 白石一文の同名小説を岡田惠和の脚本でドラマ化した『私という運命について』は1993年から始まり、大企業で女性総合職第一号として働く冬木亜紀(永作博美)の10年間の人生が、激変する世界情勢とともに語られていく。会社内の男女格差や、結婚と仕事の両立の難しさ。身近な人の死など、物語は波乱万丈だが、抑制されたクールなトーンで物語は淡々と進んでいく。

 何より魅力的なのが、どこか懐かしさを感じさせる映像。本作は16mmフィルムのカメラで撮影されており、昔の邦画やCMを思わせる映像となっている。そのため、記憶の中を覗きこんでいるような手触りとなっていて、90年~00年代初頭という近過去の舞台にうまくハマっている。

『連続ドラマW 北斗 -ある殺人者の回心-』

 一方、『北斗』は石田衣良の小説をドラマ化したもので、瀧本監督が脚本を担当。本作は、殺人を犯した20歳の青年・端爪北斗(中山優馬)の過去を、幼少期から振り返っていく物語で、こちらも16mmフィルムカメラで撮影されている。父母から壮絶な虐待を受けて育った北斗がなぜ殺人犯になったのかを紐解いていく物語は重苦しいが、その時々で手を差し伸べてくれる人が登場することが救いとなっている。

 こちらは2010年代が舞台だが、象徴的な形で3.11のニュース映像が挟み込まれている。『私という運命について』では9.11の映像が挟み込まれていたが、大きな歴史的事件の映像を挟み込むことで、個人の問題の背後にある歴史と社会が浮かび上がっているのが、この2作の魅力である。

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