等身大の自分を受け入れる 『私たちのブルース』脚本家ノ・ヒギョンによる韓国ドラマ4選

“人生は思い通りに行かない。だけれど、それが人生なのだ”

 そういって、生きる大変さと日常の小さな幸せを描く韓国ドラマ『私たちのブルース』。あまりの豪華キャストと名脚本家のタッグに、番組放送前から注目されていた話題作だ。全20話で、現在Netflixで週次配信中となっている。本記事では、そんな数々の名作を生み出してきたノ・ヒギョンの作品をいくつか紹介したい。

『私たちのブルース』(2022年)

『私たちのブルース』(tvN公式サイトより)

 済州島を舞台に、事情を抱えた人々の揺れ動く心情と懸命に生きる姿を描いた作品。オムニバス形式となっており、数話ごとにメインとなるキャラクターが変わっていく。オムニバスと言っても、各話が完全に独立している訳ではない。それぞれの話に登場するキャラクターが他の回でも登場し、交差しながら新たな物語を紡いでいくのだ。

 本作の見どころの一つは、劇的に何かが変わらないことだと思う。派手なアクションがあったり、物語の展開速度が早かったりするわけではなく、淡々と海辺の街で起きる日常を映し出していく。ただ、それが良い。人生は、決断と覚悟の積み重ねであることが強調され、登場人物たちがどう次の一歩を踏み出すか見届けたくなるのだ。全てが上手くは進まないため、モヤモヤもするだろう。だが、生きてさえいれば道は開けると思わせてくれるような作品だと思う。葛藤や迷いも含めて、これが生きるということなのかもしれない……とドラマの中にリアルさを感じる一作なのだ。

『ライブ〜君こそが生きる理由〜』(2018年)

『ライブ〜君こそが生きる理由〜』(tvN公式サイトより)

 分署に配属された新任警察官たちが、一人前になるまでを数々の残酷な事件と共に描くヒューマンドラマ。義理堅い警察官の家族愛、不条理な現実への葛藤、支え合いが丁寧に描かれており、涙なしには観ることができない。覚えきれないほどの登場人物それぞれにドラマがあり、気付いた時には全員に感情移入し愛おしくなってしまう。

 警察官だからといって無敵な訳ではなく、同じ一人の人間なのだということを細かく映し出しているのが見どころの一つ。厳しすぎる状況の中で、一歩ずつ前へ進んでいく姿から目が離せなくなる。また、緩急をつけるように、恋愛やサスペンス要素も含んでおり、彼らと共に喜怒哀楽を体感していくような作品だ。

『世界でもっとも美しい別れ』(2017年)

『世界でもっとも美しい別れ』(tvN公式サイトより)

 タイトル通り、最初から決められた“別れ”という結末に向けて、ある一家がどのように心に折り合いをつけていくかを描く短編ドラマ(全4話)。劇中では、死期が迫る母親と問題を抱えた家族にスポットが当てられている。本作は、1996年に放送された自身の作品『世界で一番美しい別れ』のリメイク作だ。

 本作の素晴らしさは、ぞれぞれが八方塞がりの状況に追い込まれながらも、限られた時間の中で家族の絆や愛を確かめ合っていく姿を描いている点にある。家族1人1人に対して、心残りを整理するかのように母親が向き合っていく様子は、観ていて涙が止まらなくなった。また、大きかったはずの母の背中が、小さく見える瞬間に心が締め付けられる。自分のことよりも家族を気にかけて生きてきた母の姿が印象的で、観終えたあとも余韻から抜け出せない。

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