観客を魔法界に引き込むクリエーション 『ファンタビ』第1作は音楽&衣装デザインに注目
そしてシリーズを通したもうひとつの魅力として、時代の流行やトレンドを踏襲しつつキャラクターの個性を表現した衣装デザインについても触れておきたい。
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で描かれる時代設定は1920年代のニューヨーク。“狂騒の1920年”と呼ばれ、第一次世界大戦による経済成長で好景気となり、市井の人々が活発に動いていた時代だ。
そのような背景を下敷きにして、作中に登場する“魔法を使えない人間”ジェイコブ・コワルスキーの服装を見てみると、彼はトラッドな三つ揃いのスーツを着ているシーンが多い。当時のNYではビジネスのためにスーツを着ている群衆が多く見受けられた。また作家のF・スコット・フィッツジェラルドが記した『グレート・ギャツビー』がポピュラーな娯楽だったため、ファッションアイコンである彼の着るスーツが時代の象徴だった。つまりジェイコブは作中で“普遍的な群衆のひとり”としてのファッションを纏っているのであり、それは魔法使いが勢ぞろいしている中で“ひとりだけ普通の人間である”という彼のアイデンティティを説明するためのもの、と解釈できる。
また、魔法動物学者であるニュートの装いは足さばきの良いギャザーとスリット入りのコート、そして動き回るのに申し分ないカントリーブーツだ。彼の人間性が表れている、皺の寄ったシャツやベストにもぜひ注目してほしい。
またティナは当時の女性の間で流行っていたロング丈のコートや帽子に加え、マニッシュな装いが目立つ。これは彼女が両親を亡くし、妹のクイニー(アリソン・スドル)のためにも親代わりとなって頑張らなければという気持ちの表れであり、父親のクローゼットから拝借したものなのだとティナ役のキャサリン・ウォーターストンが公式パンフレットで語っている。
忠実に時代背景を取り入れながらも、それぞれのキャラクターに最適なデザインとディテールを組み込んだ衣装たち。シリーズを重ねるにつれてマイナーチェンジしたり、雰囲気が変わったりする各々のファッションからも目が離せない。
新たなシリーズの幕開けとなった第1作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。最新作の公開日である4月8日に放送される2作目、そして『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』を続けて鑑賞し、ぜひ心ゆくまでウィザーディング・ワールドの魅力を堪能してもらえたらと思う。
■放送情報
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
日本テレビ系にて、4月1日(金)21:00〜23:34
監督:デヴィッド・イェーツ
原作・脚本:J・K・ローリング
プロデューサー:デイビッド・ヘイマン、J・K・ローリング
出演:エディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン、アリソン・スドル、ダン・フォグラー、コリン・ファレル
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