『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は最高にリッチで満足感のある傑作

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ハリーが1年生としてホグワーツに入学したシリーズ1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開された年に自分も小学校に入学したことで、「ハリーは同級生」と飲み屋で自慢しがちなアナイスが『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』をプッシュします。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

 『ハリー・ポッター』シリーズは、今世で最も大きなフランチャイズの一つです。私も正確には彼らと同い年ではないものの、自分が小学校1年生のときにハリーたちも1年生だったことから、並々ならぬ思い入れをシリーズには抱いています。私の母は、幼い私に「自分は悪い魔女で生意気な子供はスープにしてやるんだ」と言っていたくせに、自分はホグワーツではなく、マグルの行く郊外の小学校に入学したことが少し悔しかった時期もありました。2001年に始まったこのシリーズは、2011年に公開された『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 2』を以てその幕を一時閉じます。10年ですよ、10年。ハリー役を射止めた時のダニエル・ラドクリフは11歳(映画公開時は12歳)、そんな彼も最終作では22歳になっていた。同じ時期にハリーと“学生生活”を送っていたド世代の身としては、『死の秘宝 PART 2』は正気ではいられずに顔面をグチャグチャにしながら観ていました。

 そして、5年後の2016年にスピンオフシリーズとして第1作目の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が公開されました。全5作を予定して作られているこのシリーズは、やはり同じ魔法世界を舞台にしているとはいえ、主要登場人物がみんな大人であることも含め、大人向け『ハリー・ポッター』と謳われることも少なくありません。もともと『ハリポタ』だって大人も子供も楽しめる作品で、今シリーズの主人公ニュート(エディ・レッドメイン)も魅力的で、コメディリリーフなノー・マジ(マグル/非魔法族)のジェイコブ(ダン・フォグラー)も良いキャラで、次々に登場する魔法動物にはワクワクさせられました。そこにクイニー(アリソン・スドル)やティナ(キャサリン・ウォーターストン)のファッション、魔法族と非魔法族いう大人向けの新たな見どころが重なったという印象です。

 ただ、やはり少し“さらに”大人向けというか、ダークでビターなシリーズの方向性になって興収的にも伸び悩んだのが第2作目の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』。確かに2時間14分という尺に対するプロット、脚本のぎこちなさが目立ち、“ワクワク感”みたいなものは少し薄れた印象で、前作に比べてファンや批評家の評価と興収が低い結果に。第2作目にしてすでに中弛みしてしまったような形になってしまい(もちろん、いいところもあります)、これに伴ってその続編となる『ダンブルドアの秘密』に対する期待値も下がってしまうのも無理はないでしょう。

 結論から言ってしまうと、個人的な作風の好き・嫌いがある前提にはなりますが、それでも『ダンブルドアの秘密』はシリーズ最高傑作です。特に、冒頭でも触れた通り“『ハリポタ』シリーズが好きな”私にとっては、「こういうスピンオフが観たかったんだ……!」と、心の中で『ショーシャンクの空に』で雨に打たれているアンドリューみたいな感じになってしまいました。

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