三浦透子、絶妙な“距離感”の表現力 『カムカム』『鎌倉殿の13人』で見せる新たな姿

『ドライブ・マイ・カー』(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

 そして今、三浦を語る上で欠かせないのが何と言っても映画『ドライブ・マイ・カー』での主人公・家福(西島秀俊)のドライバー・みさき役だろう。みさきは化粧っ気も愛想もなく寡黙で常に淡々としており、人のテリトリーに必要以上に踏み入ることもない。そんな彼女は主人公同様に家族についてある喪失感を抱えており、本作でもキーパーソンを担う。運転の間中じっくりゆっくりと時間をかけて、主人公と自分の決して塞がることなく流血し続ける傷口とやがて向き合わざるを得なくなる、そんな伴走者役を務めた。

 2人の間には何か特別な劇的なことは起こらないのに、そこには何だか確かな連携感が徐々に横たわり、2人の空間だからこそ引き出される痛み、打ち明けられる弱さがあった。これは他人の痛みの渦に飲み込まれてしまうことなく距離感を取りつつも、それでも時として他人の人生と自分のそれが交錯する瞬間を見せられるような力量が求められる難役だったことは言うまでもない。他人事を自分事には決してしないというのは何も冷たいわけではなく、相手の人生や背景をリスペクトしているからであり、また発する一言一言への責任感が強く重いからでもあるのだろう。

 そんな三浦がどんな一恵の弱さを覗かせてくれるのか。頭では理解できても心が追いつかないというような、そんな一恵をどう表現するのか見ものだ。

 三浦は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)で源義経(菅田将暉)の正妻役を演じることも発表されている。これまではどちらかと言うと妻よりも愛人役や彼女未満の存在を演じることの多かった三浦の新たな姿が見られそうで、そちらも今から楽しみだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

■公開情報
『ドライブ・マイ・カー』
公開中
出演:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、ペリー・ディゾン、アン・フィテ、安部聡子、岡田将生
原作:村上春樹『ドライブ・マイ・カー』(短編小説集『女のいない男たち』所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
音楽:石橋英子
製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
配給:ビターズ・エンド
2021/日本/1.85:1/179分/PG-12
(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
公式サイト:dmc.bitters.co.jp

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