『妻、小学生になる。』堤真一&石田ゆり子の“一味違う”夫婦像 幸福が残ることを信じて

 さて、すでに第7話まで終え、物語はいよいよ佳境を迎える。たった一人の小学生(貴恵=万理華)が周囲の者たちを変えていく物語はユニークであり、終わりに向かっていく事実を受け止めたくないのは筆者だけではないだろう。“終わり”とは、当然ながらこのドラマの最終回のことであり、再び貴恵が遠くへと旅立ってしまうことを指している。圭介と麻衣、そして貴恵の弟である友利(神木隆之介)たちの笑顔や涙を思い出すと、そんなことには耐えられない。だが、その日は確実にやってくるのだろう。実際、第7話の終盤には万理華の中から貴恵が消え、彼女は圭介に対して「おじさん、誰?」と口にしている。これからどうなってしまうのだろうか……。

 本作を観ていると、「無理に立ち直らなくてもいい」という優しいメッセージが込められているのを感じる。大切なものを失ってしまった人や、大変な困難に見舞われた者に対し、私たちの社会はいつも立ち直ることを求めすぎだ。それが早ければ早いほど、周囲の者たちの多くが手を叩いて祝福する。だが、喪失や困難を“乗り越える”などという発想は、その暗闇の中にいる当事者からは、そう出てくるものではないだろう。だからこそ筆者は貴恵が小学生の姿であっても、やがて終わりが来るのであろう幸福なひとときに身を委ねる彼らを見守っていたかった。堤真一と石田ゆり子のコンビは毎田暖乃という才能を介して、どのような“終わり”を、そして次なる“始まり”を、見せてくれるのだろうか。幸福なものが残るのだと信じたい。

■放送情報
金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
TBS系にて毎週金曜22:00~22:54
出演:堤真一、石田ゆり子、蒔田彩珠、森田望智、毎田暖乃、柳家喬太郎、飯塚悟志(東京03)、馬場徹、田中俊介、水谷果穂、杉野遥亮、小椋梨央、吉田羊
原作:村田椰融『妻、小学生になる。』(芳文社『週刊漫画 TIMES』連載中)
脚本:大島里美
プロデュース: 中井芳彦、益田千愛
演出:坪井敏雄、山本剛義、大内舞子、加藤尚樹
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tsuma_sho_tbs/
公式Twitter:@tsumasho_TBS

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