『カムカムエヴリバディ』川栄李奈×本郷奏多が愛おしい理由 平成の恋人たちの幸せを願って

 だが、こうも言える。確かに、『カムカムエヴリバディ』の世界を生きている登場人物たちからすれば、「太陽」が時代劇スターである桃山剣之介親子であり、市井の人であるひなたたちが「月」だ。でも、視聴者からすればずっと出ていた「太陽」がひなたたちヒロインであり、彼らが観ているスクリーンという暗闇の中でひっそり姿を現わす「月」が物語上の時代劇スター・桃山剣之介なのだ。物事は常に、観る人によって、様々な色合いを見せる。

 そんな中で、あまりにも自然に恋に落ちた、ひなたと五十嵐(本郷奏多)。第一印象が最悪の相手と恋に落ちる展開は数あれど、こんなにも可愛くて、愛おしいのはなぜだろう。2人の関係性が心地いいのは、「共鳴」にある。互いに張り合って名乗りあうも、なんだか似た者同士だったり、相手を諫めようと話し始めたら、うっかり意気投合して、手に手を取って、幼い頃見た忘れられない名場面を再現してしまったり。映画を観て、同じように感動して、呆然としたまま道を歩き続けたりする。そんなこんなで、気づいたら離れられなくなっている。

 安子と稔(松村北斗)を繋いだのは、ラジオの英語講座であり、るいと錠一郎を繋いだのは、悲しい過去の記憶の中で響くルイ・アームストロングの曲だった。ひなたと五十嵐を繋いだのは、時代劇への愛だった。片や京都、片や東京という全く違う場所で生まれ、生きてきたにもかかわらず、不思議と共鳴してしまう奇跡だった。

 いよいよ時代は1992年。なかなか空想と一致しない27歳のひなたと29歳の五十嵐の現実は、切なくも可笑しみがある。「拙者、家禄も僅か、主君の覚えもめでたからず、されどそなたを幸せにしたい。ついてきてくれるか」というロマンチックな台詞は、現実世界ではなんと残酷に響くのか。

 共に歩きたくても男性に「ついていく」ことしかできなかった最初のヒロイン・安子、「私が守る」と言ったるい。なんといっても3代目ヒロイン・ひなたは、かつて前述の台詞に対し「誰がお前なんかについていくか」と斬り捨てた、侍に憧れる、型破りなヒロインなのである。ひなたと五十嵐の恋と夢の行く先はいかに。平成の恋人たちは、どんな形で、共に歩いていく道を選ぶのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK

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