菊池風磨が過去一番の輝き 『ファイトソング』に願う“王道恋愛ドラマ”への展開
手術の日程が刻一刻と近付き、芦田(間宮祥太朗)との別れを強く実感するようになる花枝(清原果耶)。しかも手術の前に入院しなくてはいけないことから、2人の“取り組み”の期限はさらに早まることになってしまうのである。
3月1日に放送された『ファイトソング』(TBS系)第8話は、このドラマにおける第1章のフィナーレがやってくる。花枝と芦田が恋の終わりを迎えるための準備に励み、そして実際にそれに至るまでがあっという間に描かれていく。
花枝がずっと隠していることについて、“期限”にこだわる理由について聞きたいけれど聞けずにいる芦田は、花枝に「ほんのちょっとでいいから会いたい」と告げて夜のファミレスで待ち合わせをする。しかし、案の定花枝は理由を教えてくれず、結局2人の間にはもう別れ以外の選択肢が残されていないことを確認すると、花枝は最後の日にお別れ会をすることを提案する。一方、どうしても芦田に病気のことを伝えないでほしいと頑なな花枝に思い悩む慎吾(菊池風磨)は、いてもたってもいられずに芦田の家へと向かうことに。
ファミレスでのやり取りで、花枝は「心を動かすために取り組んでいる。別れはそれの最大級」だと言う。最初から予定されていた“別れ”が、極めて予定通りに訪れることを冷静に受け止めようとする花枝と、対照的に考えれば考えるほど受け入れられずにいる芦田。もちろん“恋愛ドラマ”として考えれば芦田のほうが至ってノーマルな反応だ。互いに明確な目的を持ち、かちっと期限を決めて互いに前に進むことを意図した“取り組み”は、やはり恋愛ドラマ的にイレギュラーなかたちで始まり、イレギュラーなままで幕を下ろすわけだ。
その終わりのタイミングで「別れたくない」と正直に告げる芦田に対し、花枝は即座に断り、「恋に負けるのは嫌です」と語る。どこかそれは、正反対な表出のされ方をする同じ“弱さ”のあらわれにも思える。決められた運命に必死で抗おうとする芦田に、運命を受け入れながらもなんとか強く気丈に振る舞おうとする花枝。それはお互いが置かれた境遇――芦田の場合は契約解除という運命に曲を作ることで抗おうとすること、花枝の場合は耳の病気に対して聞こえなくなることを想定して思い出づくりをしようとすること――への向き合い方と符合する、両者の性格のようなものかもしれない。